映画紹介『マルモイ ことばあつめ』

映画「マルモイ」

 1940年代、植民地支配下の朝鮮半島。日本による「皇民化政策」が強まる中、人びとは「創氏改名」を強いられ、公の場での朝鮮語の使用も禁じられた。本作は、そんな状況のもとで密かに朝鮮語の辞典作りを進めた「朝鮮語学会」の活動がモデル。タイトルの「マルモイ」は朝鮮語で「言葉集め」を意味する。漢語的な「語彙集」の響きより、日本でいう「大和言葉」的なニュアンスで「ことばあつめ」の表現に。

 映画は、対照的な二人を軸に展開する。一人は、親日派で京城第一中学校の理事長を父に持ちながら、秘密裏に辞典作りを進める知識人ジョンファン。もう一人は、窃盗や喧嘩に明け暮れ読み書きができない前科者のパンス。正反対の二人が辞典作りを通じて同志になっていく。文字の読めなかったパンスがハングルを習得し、初めて小説を読んで涙を流す場面は、映画全体の主題を重ね合わせる場面。

 辞典編纂には、南北に長い朝鮮半島の多様な方言を集め標準語を定める作業が不可欠。この地道な作業があればこそ分断後の韓国と北朝鮮で互いに言葉が通じる。この作業がなければ言語だけでなく意識や感覚もより隔ったとも言われる。

 治安維持法により33人が検挙され2人が獄死した「朝鮮語学会事件」。だが辞典作りを支えたのは編集者や学者だけではない。各地の教員や郵便局員、そしてパンスのような名もなき民衆が死を賭して協力した姿が描かれる。

 エリート学校で適応を迫られる兄や幼い妹など、パンス親子の葛藤の描写がありラストシーンは胸に迫った。物事の本質に迫るテーマをエンタメ映画に仕上げる韓国映画はすごい。

ちば合同労組ニュース 第189号 2026年4月1日発行より

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