実践的に考える職場と労働法 意外に知らない労働・社会保険

実践的に考える職場と労働法

意外に知らない労働・社会保険

1日限りの雇用でも労災保険は給付されます

 わりとよく聞かれるテーマなので労働保険・社会保険の加入についてまとめてみます。労働保険は労災保険と雇用保険、社会保険は厚生年金と医療保険(健康保険)、介護保険を指します。5つをまとめて「広義の社会保険」と呼ぶこともあります。
 労働保険の適用は、事業所単位で正社員、パート・アルバイトを問わず労働者を一人でも雇用していれば業種・規模を問わず適用事業となり、事業主は加入手続きを行い、労働保険料を支払わなければなりません。NPOや個人事業主も加入義務があります。例外は、別の制度がある公務員や、小規模な個人事業主の農林水産業(暫定任意適用)だけです。

労災保険

 一人でも雇用すれば加入義務がありますが、実際には中小企業を中心に未手続きの事業所は相当あります。労災申請をしようとしたら未加入のケースはありえます。もちろん労働者に過失はないので労働者は保険給付を受けることができます。その場合、事業主は保険料や追徴金、給付費用の徴収を受けます。罰則もあります。
 労災保険料は全額を事業主が負担します。労災事故の発生率などで保険料率が決まるので金属・石炭鉱業と新聞・金融業では35倍以上の差があります。労災事故が生じると保険料が上がり、事故がないと下がる仕組みなのでしばしば労災隠しが発生します。
 保険料は年度ごとに会社が払った賃金総額に保険料率を掛けて事後精算する仕組みなので、きちんと契約書を交わさないような1日だけの雇用でも手続き上は問題なく労災事故になれば保険給付は行われます。たとえ不法就労者でも保険給付は行われます。中小事業主や一人親方には特別加入制度もあります。

雇用保険

 雇用保険は、従業員5人以下の個人経営の農林水産業などが任意適用となりますが原則として労働者を雇用する事業所はすべて対象となります。
 適用事業所で働く労働者で、一般被保険者の対象となるのは、週20時間以上で1か月以上働く見込みがある労働者です。アルバイト・パートでも週20時間を超えれば雇用保険に加入できます。
 ただし学生や別の制度がある公務員は適用除外となります。雇用保険では、一般被保険者のほかに、65歳以上の高年齢被保険者、季節労働者などの短期雇用特例被保険者、日雇労働被保険者などがあります。
 雇用保険料は労使折半で、労働者の負担分は賃金の0・3%(農林水産・建設は0・4%)です。事業主は同額+αを支払います。65歳以上の保険料は現在免除(保険給付は行われる)。日雇被保険者は一般保険料+印紙保険料を負担します。
 雇用保険財政は現在、空前の黒字で積立金は6兆円余。実は01年頃は破綻寸前でした。小泉政権は支給率や支給日数を大幅カットし、さらには自己都合退職者の受給資格を退職前半年勤務から1年に延長しました。これで資格取得のハードルが一気にアップ。1970年代半ばに5割を超えた雇用保険の受給率は2割を割り込みました。
 こうしてリーマンショックで大量失業が生じても雇用財政はまったく揺らがず今や積立金が6兆4000億円を超えるに至ったのです。

厚年・健保

 厚生年金と健康保険の適用事業は、すべての法人、国・地方公共団体、5人以上を雇用する個人事業主が該当します。農林水産など第1次産業、理容・飲食・旅館などの接客業など一部業種は5人以上でも適用除外となります。
 70歳未満の労働者は原則として強制加入です。日雇労働者や季節労働者、臨時の事業所で働く人は適用除外となります。
 短時間労働者は、通常労働者の4分の3以上の日数・時間で働く人は適用されます。さらに、501人以上の事業所では、20時間以上+賃金8万8000円以上の労働者も適用となります。
 いわゆる「130万円の壁」とは、年収がこの額を超過すると配偶者の扶養からはずれることです。職場の健康保険と厚生年金に加入できない場合は、国民健康保険や国民年金(16340円)の保険料の支払いが必要になることを指します。また年収103万円を超えると配偶者の扶養控除がなくなり、住民税・所得税が増えます。
 保険料は労使折半で、健康保険料の労働者負担分は賃金の約5%、厚生年金は9%強です。40~65歳の介護保険料は健康保険料と一緒に徴収され、労働者負担分は1%弱です。
 保険料は原則として労使折半で賃金から天引きとなります。労働保険・社会保険料が約15%天引きされ、さらに住民税と所得税も加えると手取りは額面賃金の75~80%になるはずです。(S)

ちば合同労組ニュース 第94号 2018年05月1日発行より

連載・介護労働の現場から〈最新レポ⑦〉介護者を解放する

連載・介護労働の現場から〈最新スペシャルレポー⑦〉

介護者を解放する

介護労働者の開き直り

 会社の違法性は、年金事務所の「介入」により、私の社会保険加入や勤務実績は証明され、一か月分の給料は振り込まれた。
 私は退職後、半月で転職した。
 私の退職後も、ドミノ倒しのように職員が次々といなくなり、あまりの過重労働で体調不良の職員ばかり。業務分担や責任のなすり合いで職員の人間関係は最悪になり、入居者や家族からの抗議の怒号は絶えることはない。
 そんな泥沼の戦場のような職場でも、労働者は、どうにか正規雇用で転職して毎月決まった給料が入り始め、それを糧として生活するようになると、スパッとやめて再び路頭に迷うことを簡単には決意できない。介護はどこもブラックばかりと開き直る。
 一方で、入居者はますます悲惨な状況だ。十分な介護がないと、歩ける人が歩けなくなり、立てた人が立てなくなり、やがて座れない→寝たきりとなる。老年期の身体と心は、見捨てられることにより、容易に衰退し、本来は何十年と生きられる人が、わずか数か月もたたないうちにあっけなく亡くなる。
 しかし、寝たきりは、ベッドから動いてもらうことがないのでむしろ介護はらくだ。しかも、重度化で施設への介護報酬が増える。

人手不足でも満床

 経営側は人手不足に応じて、利用者を制限すべきだが、居室の稼働率しか関心がないし、格安有料老人ホームにしか入れない人は多く、どれだけ人が辞めても施設は満床状態が続く。
 10名配置されていた日勤職員がわずか2名となれば、放置どころか、事故や虐待やコンプライアンス違反が起きて当然。それでも、裁判で刑事や民事責任を一番に問われるのは、労働者なのだ。
 もう、「働き続けることが美徳」という時代ではないし、空前の売り手市場。介護の転職は容易だ。「お年寄りが気の毒だから辞めない」のは間違いだ。辞める勇気のない労働者と、経営側に甘い介護保険制度に守られ、ブラック会社はなかなかつぶれない。

人を棄てる国家

 この国の介護を決めているのは政府と財界。厚労省はその枠内をいじくり混乱させているだけの存在。人手不足の一番の原因は、介護報酬の引き下げ、介護職のスキルやメンタルを考慮しない介護保険制度の改悪なのは明らかなのに、出てくる対策は介護ロボットや外国人労働者の導入…。
 最近、政府は人手不足について「介護職員の処遇改善はなされている。マスコミによって介護職のイメージがデフォルメされているからだ」と答え、介護職のイメージ刷新のために、広告代理店経由の広報活動を始めようとしている。
 これは、ますます介護労働者を追い詰める。現場の介護労働の実態とあまりにも乖離した官製フィクションを信じ、人々がサービスを利用したり就職したりしても、すぐさま現実に直面し、その不満と苦情は、広報イメージと異なる生身の介護労働者に向けられるだろう。介護労働者をどこまで痛めつければ気が済むのか。
 介護保険下での介護者は家族の無償労働の代替えではない。介護労働者の十分な人員配置と最低賃金制度を設け、落ち着いた職場環境で、専門家としての知識と経験を積んでもらう。
 同時に在宅で家族などが介護をしている場合も介護報酬が支払われる制度も検討されるべきだと思う。
 介護を受けている高齢者は、先の戦争で「皇軍」「挺身隊」として応召し、青春=戦争だった最後の世代である。
 私は施設で働きながら、お年寄りが人生の最後で日々接する人として、その人生を肯定的に捉えて穏やかに過ごしてしてほしいという強い願いを持っている。老後も国家に棄てられているでは浮かぶ瀬がない
 そのために闘うのは介護労働者の最大の仕事だろう。(おわり)

ちば合同労組ニュース 第94号 2018年05月1日発行より

(争議報告) 不当な降格・評価との闘い

(争議報告) 不当な降格・評価との闘い

今後の足掛かりつくった

 2013年10月の降格、および14年度分業績評価(5段階の最低)に端を発して、16年1月から労使交渉を行ってきましたが、18年3月に、16年度分業績評価までについて、会社側による一部補償措置を含め労使合意となりました。この場をお借りして報告させていただきます。
 私は12年1月に現職場に異動して以来、職場としての仕事のやり方、業務目標・業績評価のあり方、上司(3名)の行動・言動などについて職場で積極的に意見表明などしていました。
 そして、そのような改善すべき良くない状況の延長線上で、降格、低評価、およびこれらに連動した降級が行われたのです。
 会社側の「説明」も、当初は私への個人攻撃ばかりでしたし、制度・運用に話が移ってからも、別途会社側が従業員向けに行っている説明とは異なる内容がいくつかあり、降格・低評価を既成事実としてとにかく押し通そうという意図が伺われました。
 組合加入前の私は、上司3名が職責を果たしていないなど、ある意味個人攻撃のような主張が出発点でしたが、その後、私の上司に限らず会社全体の問題だという確信が強まり、労使交渉の場ではそちらに軸足を移しました。
 上司・会社側の主張に随時反論を述べつつ、会社が日頃社内外にアピールしている「法令順守」や他社不祥事ニュースを引き合いに出したりもしながら、粘り強く団交を重ねた結果、一つの節目と言える今回合意に達することができました。
 全体としての要求達成度はかなり低いものの、泣き寝入りという従来状況(≒世間・社内の大勢)からすれば、踏み出した足を着地させ前進できた大きな一歩と捉えたいと思います。
 人事・評価制度および運用に関して、私に直接関係する部分でも未決・要改善事項はいくつか残っていますので、会社・上司側とのやり取りは今後とも続けて行こうと思っています。職場での意見表明・不具合指摘もこれまで通り続けます。
 また、社内で同様な不利益取扱いを被っている人や、制度・運用の改善を目指している人を探して連携していければと思っています。
 現実問題として、不当な状況に対する怒りは、声を上げ、立ち上がり、足を踏み出すための原動力として必要です。
 また怒りのない「交渉」では会社側から何も勝ち取ることはできません。しかしながら、怒りしかないままでは暴徒と同じです。個別の労働問題に関する怒りが連携することは本来困難ですし、何らかの状況変化で怒りの対象を見失ったら、抜け殻になるか次のネタ・ターゲットを探しに行くか、となるでしょう。
    怒りが趣味・生きがいと化すのは、労働者・生活者としては敗北とも思います。このような面にも留意しつつ、まずは社内の労働環境改善に向けて、引き続き活動していきたいと思います。
 これについては横のつながりも重要と考えています。特に社内での仲間集めや組合立ち上げについて、ご支援ご指導、情報交換など、今後ともよろしくお願いします。

ちば合同労組ニュース 第94号 2018年05月1日発行より

編集後記 ニュース 第94号 2018年05月1日発行より

【編集後記】

「同一労働同一賃金の格差是正で正社員の手当廃止」「過酷ノルマで郵便局が高齢者に保険を押し売り」など郵政会社のブラックぶりが次々と明らかになり、ものすごく怒りがわき上がっています。ちば合同労組でもチラシを配ったりしています。(S)

ちば合同労組ニュース 第94号 2018年05月1日発行より

9条改憲発議ー国民投票させない闘いを

9条改憲発議ー国民投票させない闘いを

(写真「9条改憲発議絶対反対! 朝鮮戦争とめよう!3・25大行進 in HIBIYA」集会が開催された日比谷野音から出発の先頭に立つ呼びかけ人と労組隊列)

 改憲をめぐる情勢が非常に緊迫してきました。
 安倍首相は年頭の会見で「今年こそ憲法のあるべき姿を示す」と表明しました。3月25日の自民党大会で安倍首相は、9条に自衛隊の存在を明記する党の改憲案に触れ「憲法にしっかりと自衛隊を明記し、違憲論争に終止符を打とう」と演説しました。
 同大会では、党憲法改正推進本部が9条を含む「改憲4項目」の条文素案をまとめたことが報告され、「改憲の実現を目指す」と明記した運動方針案が採択されました。
 世間の認識はまだそこまで至ってないのが実状です。しかし現実の政治過程は、秋の臨時国会で改憲を発議し、来年春には国民投票を実施するプランで事態は進んでいます。安倍政権の政治的危機は予断を許さない状況ですが、改憲に突破口を見いだしていることは間違いありません。
 5月1日の新天皇即位、秋の即位の礼、大嘗祭を「静かな環境」で迎え、2020年に新憲法を施行するには、来年春しか国民投票のタイミングがないとの判断なのです。
 73年前の戦争では大変な惨禍を経験しました。日本人で約310万人、アジアでは約2千万人の犠牲者が出ました。皆さんの家族・親族にも少なからず戦死者・犠牲者はいると思います。やはり戦争と改憲だけは絶対に許してはなりません。
 憲法9条に「自衛隊保有」を明記することは、戦争放棄・戦力不保持を定めた9条が戦争を合法化する条項に変わることを意味し、金魚鉢に青酸カリを投げ込むに等しい事態です。
 北朝鮮の「脅威」を利用して、「敵基地攻撃能力の確立」を掲げた大軍拡が推し進められています。すでに武器輸出3原則は撤廃され、財界は「防衛産業を成長戦略の柱に」と要求する意見書を政府に提出し、兵器開発や軍事研究に大企業や有名大学が競い合って参加しています。
 この数年来、安保法や共謀罪などが次々と制定され、Jアラートなど朝鮮半島をめぐる戦争の危機を意図的にあおられています。安倍政権は執拗にマスコミと教育を攻撃しています。日本の社会・経済の閉塞感と危機が戦争を醸造しています。
 「二度と戦争をしない」「教え子を再び戦場に送らない」は戦後の焼け野原から再出発した日本の労働組合運動の原点です。日本最大の労組であるUAゼンセン(約160万人)が秋の大会で改憲を掲げると言われています。安保闘争の歴史をみるまでもなく労組の位置は大きい。改憲反対の取り組みを強めていきたいと思います。

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労働学校へご参加を

 テーマ 動労千葉の歴史と闘い
 日時 4月21日(土)13時~ 
 講師 田中康宏(動労千葉委員長)
 ちば合同労組は団体受講しています。ぜひご参加ください。次回講座は「動労千葉の歴史と闘いについて」

ちば合同労組ニュース 第93号 2018年04月1日発行より

外房線守れ、勝浦集会に200人

外房線守れ、勝浦集会に200人

 3月17日のダイ改で外房線の茂原以遠の列車が5本削減されることに反対し勝浦市内で「外房線切り捨てのダイヤ改正と今後の地域の発展を考える集い」が開かれました。約200人が参加し、大盛況となり、新聞でも報道されました。ちば合同労組も地元組合員が参加しました。

ちば合同労組ニュース 第93号 2018年04月1日発行より

実践的に考える職場と労働法/有給休暇は労働者の権利

実践的に考える職場と労働法

年休ちゃんと使ってますか?

年次有給休暇は法律で定められた労働者の権利

 皆さんは年次有給休暇(年休)をちゃんと使っていますか? 意外に細かいルールを知らない人も多いと思います。
 年次有給休暇とは、その名の通り「有給」で休むことができます。つまり休んでも賃金が減ることがない休暇です。厚生労働省は「一定期間勤続した労働者に対して、心身の疲労を回復しゆとりある生活を保障するために付与される休暇」と解説しています。

●法律上当然に発生

 年休が発生する条件は、

①働き始めた日から6か月経過していること
②その期間の全労働日の8割以上出勤したこと

 ――この2要件を満たすことで法律上当然に労働者に生ずる権利です。会社の裁量で与えるものでも労働者が請求して発生するものでもありません。必ず発生します。
 最初に年休が発生した日から1年が経過すると、それまでの1年のうちに8割以上出勤していれば今度は11日間の年休が発生します。その後も同様に②の要件を満たすことで最大20日間の年休が発生します。
 労働時間が少ないパート労働者にも年休は発生します。労働日数による比例付与となり、例えば週4日なら7日の有休からスタートして最大15日が発生します。
 年休を使わずにいると発生から2年で時効消滅します。
 例えば2017年4月1日に入社した人なら17年10月1日に10日、18年10月1日に11日分の有休が発生します。しかし最初に発生した10日の有休をまったく使わずにいた場合、2年の時効に当たる19年10月1日に消滅し、同時に12日間の年休が新たに発生します。
 年休は発生日から2年以内であれば繰り越すことができるので、上記の例であれば、19年10月1日に10日間が時効消滅し、11+12日の年休の権利を持つことになります。

●理由は必要なし

 年休は労働者の「休む権利」なので休む理由は自由です。申請書の提出などが必要な場合でも「私用」と書けば問題ありません。実際は、冠婚葬祭や病気など「遊ぶ以外の用事」がなければ年休が請求しにくい職場も多いですが、法律上は「理由を会社に伝える義務はない」と言えます。
 裁判でも「年休の利用目的は労基法は関知しない。年休をどう利用するかは使用者の干渉を許さない労働者の自由」となっています。
 原則として労働者が指定(請求)した時季に使用者は年休をを与える必要があります。「時季指定権」と言います。
 他方で法律は「ただし、請求された時季に年休を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合においては、他の時季に与えることができる」と規定しています。会社側の「時季変更権」です。
 ちなみに時季となっているのは「バカンスのように季節的であることが望ましい時期」ということらしい。あまりピンときません。
 会社はいつでも変更できるわけではありません。時季変更権の行使の適否は、事業の内容・規模、労働者の担当業務、事業活動の繁閑、他の労働者の年休とのとの調整など様々な要因を考慮して判断されることになります。
 使用者は労働者の希望が実現できるように配慮が求められ、いつも要員ギリギリで「君が休むと操業できない」は理由になりません。

●様々な付与の方法

 労使協定により時間単位で使えるようにできます。
 同じく労使協定により5日を超える年休について、協定で定めた時季に使えるようにできます。①一斉休業方式、②班・グループの交替休業方式、③年間計画表による個人方式などがあります。この場合、時季指定権・変更権は共に消滅します。

●年休中の賃金

 年休の期間・時間の賃金は次の3つのいずれかです。

 ①平均賃金
 ②通常の賃金
 ③健康保険の標準報酬月額の30分の1(労使協定)

 分かりやすいのは②で実際に労働したものとして扱う賃金の支払い方式で、実際、最も一般的なケースです。

●皆勤手当はどうなる?

 厚労省の調査では皆勤手当は全企業の3分の1以上で制度化されています。年休を使うと「休み」として扱われ皆勤手当がなくなると思われがちですが、年休を使った人の皆勤手当を減らしたり、支給しないことは違法です。
 労基法附則136条は、年休を取得した労働者に対して不利益取扱い(精皆勤手当や賞与の減額、欠勤扱いとすることによる不利な人事考課など)は禁止しています。ただこれについて罰則は設けられていません。

●労働基準法に違反

 年休は、労働基準法39条が定める労働者の権利です。労働者に年休を与えなかったり、取得を拒否すれば、労基法違反です。違反は「6か月以下の懲役又は30万円以下の罰金」が科せられます。

▼年休を使った日の分に決められた賃金を払わない
▼正当な理由もなく会社が時季変更権を行使し、年休を取る日を変更させる
▼年休取得日に出勤を命じる

――などはすべて違法です。(S) 

ちば合同労組ニュース 第93号 2018年04月1日発行より

連載・介護労働の現場から〈最新スペシャルレポート⑥〉ブラック会社のルール

連載・介護労働の現場から〈最新スペシャルレポート⑥〉

ブラック会社のルール

●破れかぶれの報復

 私の手元には、会社印のある採用通知書、雇用契約書、退職証明書。さらに発行された健康保険証と雇用保険被保険者証のコピー。タイムカードのコピーはないが、出勤日は手帳や日記にも記録してある。1か月分の研修資料、施設のマニュアル。書類だけでも、これらは採用も1か月の勤務実績もあったことを証明している。
 一方、会社は、主張を貫くには、私に関する職員名簿や出勤簿、賃金台帳など、すべてを改ざんしなければならないではないか。破れかぶれの報復はすぐに破たんし、会社のルールは国の法律の前にこうべを垂れるのは明白だと思った。
 なぜ、本社人事課や施設長などの中間管理職が、明らかに違法な会社のルールやブラックな経営に随うのだろう。

●悪の凡庸

 介護施設で働いていると、まるで収容所のようだと感じることがある。起床、就寝、食事、入浴。排せつまでも時間が決まっており、毎日何度もバイタル、食事量や排せつ状態などが詳細に記録され、食べたくないのに食べるように注意され、便がでなければ下剤、尿が少なければ水分補給。
 現場では、介護職が指示命令する立場になり、効率化するために、利用者ができることも取り上げて代わりにやってしまう。長年、施設で働いていると、管理統制のルーティンワークに何も感じなくなる。同調圧力もあり、右から左に流すだけの「作業」に慣れきると、経営者(本社)から施設長を伝わってくる「会社のルール」の違法性、感情的な不快感すらもマヒしてしまっている。
 まじめで勤務態度もいい職員ほど、会社のルールに忠実だ。ハンナアーレントは、ナチの戦犯アイヒマンについて、「アイヒマンは上の命令に忠実に従っただけの凡庸な官僚にすぎない。罪の意識がなかった。」と記述している。

●追い詰められた者の攻撃

 たびたび報道される高齢者施設での介護職員による事件。当の職員は、ほとんどの場合、自覚もなく、虐待、傷害、殺人をやっていることも多い。
 きっかけとなる原因は、入居者が何度もコールを鳴らす、何度も粗相をする…等、ささいなものだ。いちいち対応していては仕事が回らないということで頭が一杯になると保護しなければならない立場の人間に攻撃の矛先を向ける。それは事件を起こした職員個人の属性やストレスの問題ではなく、介護労働の体制や労働環境が導いた必然、起こるべきして起こった事件ではないだろうか。
 特にブラック施設では、会社のルールがすべて。「決まりだから」で、仕事への判断や決定の主体性が損なわれた状態で教育され、連日の過酷な労働でさらに判断力や分析力がもぎ取られる。
 アーレントは「思考することで、人間の善悪や感情がよみがえり、強くなる」という。しかし「介護=弱い人の立場にたつ」ことと、「会社のルールに従う」ことの相反性のバランスをとりながら働くことの危うさ。私にとってはつらい一か月で、今もトラウマとして残っている。
(あらかん)(つづく)

ちば合同労組ニュース 第93号 2018年04月1日発行より

映画紹介『鉄くず拾いの物語』

映画紹介『鉄くず拾いの物語』

 わずか230万円の資金、9日間で撮影された映画がベルリン国際映画祭で主演男優賞(銀熊賞)など3部門を受賞。ボスニア・ヘルツェゴヴィナに暮らすロマ一家を描く。
 ロマは中東欧に居住する約1200万人の移動型民族で欧州最大のマイノリティグループとされる。ボスニア戦争に従軍した夫ナジフは鉄くずを売って一家を支え、妻セナダと2人の娘の家族で貧しくも幸せに暮らしていた。
 ある日、車の解体作業を終え帰宅したナジフは妻の腹痛に気づく。病院へ急行した2人に告げられたのは流産と手術費用980マルク(約6万円)。「保険証がなければ手術はできない」。今すぐ手術をしなければ敗血症で妻の生命は危うい。「分割で払う」と懇願するが受け容れられない。やむなく帰宅するが体調が悪化し病院を再訪する。だが門前払いに。
 妻を救うため必死に鉄くずを集め、兄弟や隣人の助けを請い、国の組織に助けを求めるナジフ。組織の女性が一緒に病院に掛け合うことになるが病院に2度も拒否された妻は「行っても意味がない」と心を閉ざず。結局、その窮地を救ったのは妻セナダの妹が持つ「保険証」だった――
 息が詰まるような緊迫感が漂う映画。後で知ったのだが、実話がモデルで地元紙の記事を読み、村を訪れた監督が本人たちに演じることを提案したのだ。映画に登場する大半が実際の出来事で同じ役割を担った人びと。違うのは医者を演じた2人だけ。
 旧ユーゴを解体したボスニア戦争から約20年。「社会主義」が崩壊し、労働者階級の力が失われた現在の中東欧社会の深層断面を鋭く描く。何度も映り込む異形な巨大発電所は何を象徴するのだろうか?

ちば合同労組ニュース 第93号 2018年04月1日発行より

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