介護労働の現場から〈01〉
2013年04月07日
普通の労働者

知り合いに介護(高齢者の)の仕事に就いているといえば、返ってくる返事は、きつい、汚い、給料安い……といった類いのものが多く、「奇特な人」扱いか、底辺労働するほど生活に困っているのか……という差別的な目で見られる。
逆に、福祉行政とか介護ビジネス、つまり安い対価で介護の人手を確保したい、老人からの金儲けをたくらむ側からは、「介護は専門職、お年寄りに安全と安心を与え、人間として成長できるやりがいのある仕事」という福祉の金科玉条が喧伝されている。

そして、介護労働といえば、とびぬけて離職率が高く慢性人手不足。国の介護保険制度の下で介護報酬が低く抑えられているため、介護報酬から支払われる介護労働に近代的な市場原理はなく、いくら人手不足になっても需給関係が賃金や労働条件に反映することはない。いわば国の奴隷で、さらには自国で確保できないから、他国から調達しようと企んでいる。

高齢者施設の火災、認知症施設における虐待や殺傷事件などがニュースになる。「あってはならないこと」と糾弾することは簡単であるが、その背景には必ず制度の問題や介護労働の現場状況が大きな要因としてある。現場の労働者は聖職者でもボランティアでもない。年寄りの召使でもなく、低賃金で過酷な労働に苦しみながら、「働くということ」「歳をとった〈人間〉のこと」を日々考えつづけている普通の労働者である。
これから少しずつ、普通の労働者にとっては「あってはならないこと」を書いていきたいと思う。
私は、60歳近くになって初めて高齢者介護の仕事に就き、経験は一年ほどである。まだ、介護労働のなんたるかを語る資格はないかも知れない。しかし、異業種から飛び込んできた新米が、何年もやってきたベテランよりも、現場がよく観察でき、さらに問題意識を外に向かって発信する能力において劣ることはないのではないかと思う。

介護労働には「守秘義務」がある(それが告発や労働運動を拒んでいる大きな要因)ので、現場を書くことには大きな勇気がいる。また、読者に対しては具体的な記述ができないこともあるし、名前は仮名なので許していただきたい。著者は『あらかん』―アラウンド還暦、である。連載ですので、ヨロシクオネガイシマス。

(あらかん)
(ちば合同労組ニュース33号から)