全国の病院で経営危機  自維連立合意書「非営利原則見直し」

自民・維新合意書

 24年度の調査で、国公立・民間を含む一般病院の63・3%赤字に陥っていることが判明した。前年度から8・4㌽の大幅増だ。医業・介護の収益に対する平均利益率はマイナス7・3%と過去最低レベルを記録。大学病院も約7割が赤字と、その経営危機は深刻の一途を辿っている。

 千葉大医学部附属病院は、24年度決算が約27億円の赤字、今年度も数十億円の赤字を見込んでいる。大学病院の医業収益(診療報酬)は2・5%増と増えているが支出の増加に追いついていない。

 病院経営を圧迫する直接の要因は、物価高騰や賃上げに対応するための人件費と経費の増加だ。それは物価高騰や賃上げに対し診療報酬の伸び率が低いことも示している。コロナ禍で支給された補助金や診療報酬の上乗せ特例も終了した。

 病院経営は、新型コロナ感染症以前からすでに赤字基調だった。特に高度な医療や救急医療を提供し、手術件数の多い病院ほど、経営が困難になっている。

 病院経営が厳しい状況にあることを理由に、賃上げの動きが他産業に比べて極めて鈍いのが実情だ。賃金水準の低さなどを一因として、看護師の離職率が上昇し、中途採用も困難になっている。

 結果、現場は人手不足がさらに深刻化し、病床の一部を閉鎖する事態が各地で発生。これは、地域住民が適切な医療を受けられない「医療アクセス制限」に直結する事態をもたらしている。

国民皆保険の解体

 病院経営をめぐる議論の背後で、日本の国民皆保険制度の根幹を揺るがし、医療を新自由主義的転換へ導く危険な動きが進んでいる。

 特に、自民と維新の連立政権合意書にある「医療機関の収益構造の増強、経営の安定化を図るための営利事業の在り方の見直し」は重大だ。

 日本の医療機関は、医療法に基づき非営利が義務付けられている。「収益構造の増強」を名目に「営利事業の在り方」を見直すことは、この非営利原則を崩壊させ、医療機関に利益追求を許す新自由主義的転換にほかならない。

 これを推進すれば、利益率の高い事業や診療を優先し、利益率の低い救急医療や小児科、産科など地域住民にとって不可欠な医療から撤退が進む。これは命の選別につながる医療の市場化(自由化)を促進し、国民皆保険制度の解体へとつながる極めて重大な問題だ。

 全国病院会は「はがきは値上げなのに病院だけが値上げできない」と、公定価格(診療報酬)への強い不満を述べ、健康保険組合連合会は「健康保険料、4割は高齢者医療に 現役世代には6割のみ」と訴える姿勢も、国民皆保険制度の解体や医療の営利化を志向する新自由主義的なロジックと言わざるを得ない。

 この間の高額療養費制度の見直しや、維新が主張するOTC類似薬の見直し(保険適用除外)の議論も、同様に人びとの医療アクセスを制限し、貧富の差によって受けられる医療に格差が生じることを促進するものだ。

 病院経営の危機を扇動し、医療を市場原理に委ねる新自由主義的転換を許せば、米国のように医療費が高騰し、貧富の差によって受けられる医療に差が生じかねない。

 何よりそれは現場の医療労働者の労働強化や賃金抑制、イデオロギー的支配の強化として現れる。労働組合は団結して立ち向かおう。

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東京新聞の連載「医療の値段」
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