全国郵便局7割で点呼義務などの違反

yuusei

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日本郵便の営業ナンバー剥奪

 日本郵政は今年4月、全国で7割を超える2400カ所の郵便局で点呼などが不適切であったことを公表した。物流事業者でこれほど大規模な不正事案は前代未聞だ。

 発端は、兵庫県内の郵便局で数年間にわたる点呼の未実施の発覚。調査すると、全国で8割の郵便局で不適切な点呼や飲酒運転などが日常茶飯事であったことが明らかになった。

 運行管理者による点呼がほとんど行われず、アルコール検知器も使用しない。週末点呼はゼロ…。さらに、点呼記録10万件が改竄されたとこも発覚した。

 貨物自動車運送事業法などは乗務前後の点呼を事業者に義務づける。点呼を怠った場合、事業所ごとに「車両停止処分」などが科される。違法の内容や回数、事業所の規模による計算式があり、停止日数や台数が決まる。

 今回の問題で、国土交通省は6月25日、日本郵便の一般貨物自動車運送事業の許可を取り消した(営業「緑」ナンバー剥奪)。最低5年間、約2500台のトラックやバンが使用できない。再発防止の徹底を求める安全確保命令も出した。今回は対象外である軽トラック3万2千台などについても、結果がまとまり次第、「車両使用停止」の処分が科せられる。

 かんぽ生命保険の不正販売(高齢者に二重契約・不利益契約など)、ゆうちょ銀行の顧客情報の不正利用、長時間労働や過労・パワハラ自殺など、郵政をめぐるトラブルは多い。委託契約ドライバーへの違約金や偽装請負、配達員の過重労働などを理由とするアマゾンやヤマト運輸との軋轢も記憶に新しい。

点呼などの義務

 一般貨物自動車運送事業における点呼などの義務は、運転者の安全確保と事故防止を目的とした法的義務だ。道路交通法や貨物自動車運転事業法に基づき、貨物自動車運送事業輸送安全規則で詳細が定められている。

 点呼の目的は、①運転者の健康状態の確認、②アルコールチェック、③運行指示の伝達、④車両の安全性確認、⑤勤務時間・休憩・睡眠の把握など。

 点呼の種類には「出庫点呼(出発点呼)」や「帰庫点呼(帰社点呼)」「中間点呼」がある。基本的には運行管理者が実施し、運転者の健康状態や酒気帯びの有無、車両点検報告を受ける。やむを得ない場合、条件付きで電話点呼もある。

 22年4月1日以降、アルコールチェックの義務が厳格化された。酒気帯びの有無にはアルコール検知器の使用が義務付けられた。アルコール検知器は常時保持が必要だ。

違反した場合、行政指導(改善命令)や事業停止処分、最悪の場合は事業許可の取り消しとなる。

 宅配業者や引越し業者、運送会社のように貨物を有償で運ぶ場合、あるいはタクシーやバスなどのように人を有償で運ぶ場合、事業用自動車につけられる緑ナンバーが必要となる。運行管理者や整備管理者の配置、任意保険の加入、点呼の実施や、運転日報・点呼記録者の保存、改善基準告知などの労働時間の管理、定期点検や整備管理などが義務付けられる。毎年、事業報告書や運行実績報告の提出も必要となる。

 いわゆる白ナンバー車で有償運送を行うと、無許可営業(白ナンバー営業)となり、運送業法違反となる。

 フードデリバリーやネット通販などの配達で使われる事業用の軽自動車は、黒ナンバーが交付される。運送や配達など軽バンや軽トラックで有償で運ぶ貨物を運ぶ際に交付される。届出制なので比較的簡単に取得できる。

 黒ナンバーは、小規模・簡易な配送業で手続きも簡易だが、もちろん「安全確保義務」はある。運転者の健康管理や車両整備・点検の実施等は努力義務となっている。

郵政民営化の帰結

 日本郵便では、人手不足と業務の多忙化で点呼が形式化し、健康管理やアルコールチェックはおざなりだった。IT端末によるセルフ点呼が導入され、点呼管理者による対面点呼が形骸化していた。当然、過労運転、長時間労働・休憩不足などが蔓延した。過酷な職場実態が不適切点呼を引き起こしたとも言える。

 今回の営業ナンバー剥奪で有償で荷物を運ぶ「営業輸送」が法的に禁止されたが、ある意味当然の結果である。

 07年の民営化後、日本郵便の現場では、人件費の削減や非正規雇用の拡大、デタラメな効率化によって慢性的な人手不足と業務過重が生じた。その結果、長年にわたり過酷な労働実態やパワハラの横行、安全無視、法令無視が続いてきた。

 自民党郵政族や特定郵便局長会だけでなく、労働組合の責任も問う必要がある。

ちば合同労組ニュース 第180号 2025年7月1日発行より

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