書評「ブラック郵便局」

書評 「ブラック郵便局」(宮崎拓朗著/新潮社)
「全国7割の集配局で『不適切』点呼」「ゆうパックの下請け事業者から法外な違約金を徴収」「1000万人の顧客情報の流出」――今年に入り次々に暗部が報道される郵便局。その現場で何が起きているのか? 本著は、西日本新聞・社会部記者だった著者が全国2万4000局、約30万人の巨大組織・郵便局に迫ったルポ。
西日本新聞は、年賀はがきなどの自爆営業や高齢者を喰い者にしたかんぽ生命の不正販売を次々と報道。福岡を中心とするローカル地方紙だが独自のスクープを連発し内部告発のメールや手紙が全国から寄せられた。その情報提供は1千件に及ぶ。今回、著者が切り込むのは特定郵便局だ。
全国1万8千人超の郵便局長でつくる「全国郵便局長会」は郵政事業全体を支配する。21年の「局長カレンダー問題」のスクープから、特定局会の構造から自民党との癒着まで立体的に描き出す。
郵便の集配に携わるメイン局は約3200局。しかし、郵便料金は一気に3割も値上げ(23年秋)。土曜の配達(21年~)、平日の翌日配達(22年~)もなくなった。郵便事業のサービスの急低下の一方で、一日数人しか来客のない特定郵便局(約2万局)はガッチリと維持されている。
特定局は大半が赤字で、これを維持するために年間1兆円の予算を投じる。郵便事業とゆうちょ銀行・かんぽ生命の収益で隠蔽されている。集配などでの郵政現場の崩壊的矛盾はこうした構造が根本にある。それは日本社会の姿でもある。
局長会は自民党と結託し、郵便局網への「財政支援」として毎年650億円の国民負担を図る法改正を国会に提出。民営化から17年。矛盾が吹き出そうとしている。
ちば合同労組ニュース 第177号 2025年4月1日発行より
