船橋市の介護施設で行政処分

介護現場の全国的な崩壊危機
船橋市の介護施設で入浴不足発覚し行政処分
入浴が週に1回
船橋市は10月8日、介護施設「シンシア船橋」に対し、新規受入停止と報酬3割減の処分を出した。
船橋市は今回の処分で「人格尊重義務違反」という法的概念を初めて適用した。入浴回数の不足だけでなく、不足状態を解消できないまま定員54人の満床まで利用者を受け入れ続けた経営判断を問題視している。施設側は職員の退職や休職が続いたと弁解している。しかし、体制が崩壊しているにもかかわらず満員状態で受け入れを続けた責任は重大だ。
23年12月から24年9月までの8か月間、延べ152人(実人数47人)の利用者が、週2回受けられるはずの入浴を週1回しか受けられず、不足回数は計568回に上った。つまり、1週間に1回しかお風呂に入れない状態が半年以上続いたことになる。

深刻な人手不足
この事件は、全国的な介護現場の崩壊問題の一端を示している。高齢化の進展による介護需要の増加に対して、人手不足が著しく、財政の逼迫も重なっている。
2025年は「団塊の世代」が後期高齢者(75歳以上)に突入する年であり、厚生労働省のデータによれば、40年には介護職員約69万人が不足する見通しだ。
利用者は必要なサービスを受けられず、待機者が増加し在宅介護が強いられる。事故や虐待リスクも増加し、介護施設は人手不足で運営困難に陥り、倒産や廃業が増加。職員は過重労働や長時間労働で苦しみ、心身の負担も増加、離職の悪循環が続く。

地域包括ケア
日本政府は20年ほど前から、25年をターゲットに「地域包括ケアシステム」を介護保険政策の中心に進めてきた。14年に医療介護総合確保推進法が施行され、医療と介護の一体的確保を法的に位置づけ、地域包括ケアの全国展開が本格化した。
全国的に地域包括支援センターや在宅医療連携の枠組みは整備されたものの、人手不足は深刻化し、特に訪問介護事業は破綻的状況にある。介護報酬は介護事業者の利益率を圧迫しており、厚生労働省のデータによれ15年には3・5%だった平均利益率は、今年は1%まで低下すると言われる。
東京商工リサーチによると、全国の介護事業者の24年倒産は172件に達し、00年以降で最多。特に訪問介護事業の倒産が目立つ。訪問介護事業は設備投資が少なく、収入の大半は介護保険から支払われるため、経営状態が悪化しても法的整理に至らないケースが多く、自主廃業する事業者はさらに多い。

昨年頃からコロナ禍での無利子無担保融資や衛生用品補助など特別支援策がなくなり、借入金返済が迫られ経営立て直しができない事業者が倒産や廃業に追い込まれている。燃料費や介護用品の価格上昇、介護報酬改定による基本報酬の引き下げ(訪問介護)も大きな痛手となっている。
外国人労働者
外国人労働者の受け入れも拡大している。問題点は多い。日本人の同僚と比較して仕事量が多く、リーダーシップを発揮する機会が少ない。文化の違いや言語の壁から、陰口やいじめのネタにされる経験も多い。
以下は個人差のある話だが、例えばフィリピン人は同僚の改善点などを率直に指摘するが、日本人の多くは直接言わない傾向がある。日本人の受動的なコミュニケーション文化(建前と本音の使い分け、年齢や国籍、性別による階層序列化など)は、外国人労働者にとって、日本人同僚は本音を伝えてくれないと感じるなど、困惑の原因となっている。
また、非漢字圏出身の外国人労働者にとって、報告書作成や漢字の読み書きは最も困難な障壁の一つである。
続くコロナ対応
新型コロナウイルス感染症は5類感染症に位置付けられたが、介護施設では依然として重大な問題である。高齢者施設での感染リスクや対応は法律上日常化されたとはいえ、継続的な対応の義務が確認されており、現実問題として負担は大きい。今夏には新たな変異株「ニンバス」が登場し、介護施設でも感染拡大が見られ、多くの施設で警戒が続いている。
今回の船橋市の事例は、解雇労働者の労働条件や尊厳、現場の安全や利用者の権利を守るために労働組合の課題として深刻に受け止めざるを得ない。人手不足や倒産・廃業などの介護現場の崩壊の現実、外国人労働者の権利確保やコロナ禍対応など、喫緊の課題としたい。
ちば合同労組ニュース 第184号 2025年11月1日発行より

