労基関係法制研究会が〝デロゲーション〟を提唱

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労基関係法制研究会が〝デロゲーション〟を提唱

26年通常国会で労基法大改悪の動き

 厚生労働省が設置した「労働基準関係法制研究会」報告書が1月8日に公表された。
 研究会は昨年24年1月に設置され、1年で16回のハイペースで会合を開催、わずか1年後に報告書を公表した。研究会メンバーは学者ばかりで労働組合の代表は1人もいない。また本研究会の前に厚労省は「新しい時代の働き方に関する研究会」を設置し、すでに報告書が出されている(23年3月設置で24年10月に報告書)。
 今後、政労使の3者で構成される労働政策審議会で議論され、26年1月からの通常国会に法案が提出する意向が示されている。すでに2つの研究会で論点や議論の方向性が既成事実化され、急ピッチで事態が進行している。

焦点は「労使自治」

 ①「労働者」の定義、②労使コミュニケーション、③労働時間規制などが議論の俎上に上がるが、焦点は「労使コミュニケーション」の領域で、「デロゲーション」という馴染みのない概念が導入されている。〈法定基準の調整・代替〉というニュアンスの言葉だ。
 例えば、労働時間の規制について労働基準法は〈1日8時間/週40時間〉の法定労働時間を定めているが、労使で合意すれば、法律の適用を緩和・除外できる仕組みがある(36協定)。
 36協定も「デロゲーション」の一つだ。労使の集団的合意=労働者の「自己決定」があれば、最低基準である労働基準法等の規制の適用除外を行うことができる、それがデロゲーションだ。
 労働基準法の全体を通してこのデロゲーションの考え方で作り替えることが狙われている。そのために現状の過半数代表制に手を入れようとしているのだ。
 労使協定で最も知られるのは36協定だが、近年は拡大の一途で対象は百を超える。「1ヵ月単位の変形労働時間制」「一斉休憩の適用除外」「事業所外労働制」「専門業務型裁量労働制」「企画業務型裁量労働制」…
 過半数労働組合があれば自動的に過半数代表のポストはその労働組合が得るが、他方で労働組合の組織率が2割を切る状況で、過半数労働組合がある職場はかなり減っている。こうした状況も対象化しながら議論を進めている。

労基法定義の変容 

 報告書にはデロゲーション拡大策の具体的記載はないが、この問題が最大の焦点であることは間違いない。
 報告書は、労働基準法の構造について、原則である「最低労働基準」(法定基準)の定義を再確認しつつ、「労使の合意等の下に、個別の企業、事業場、労働者の実情に合わせて法所定要件の下で法定基準を調整・代替する仕組み」がセットだと強調している。
 後者を強調しつつ、後者の領域が増えたことで規制の内容が複雑化し、分かりづらくなっているとして 「単なる規制の見直しを超えて……労働基準関係法制の将来像について抜本的な検討を行う時期に来ている」と提起する。
 そして「原則的な制度をシンプルかつ実効性のある形で法令において定め、その上で……労使の合意等の一定の手続きの下に、個別の企業、事業場、労働者の実情に合わせて法定基準の調整・代替を法所定要件の下で可能とすること」が重要だと言っている。
 報告書は「労働組合が実質的で効果的な労使コミュニケーションを実現する中核」とするが、他方で「最低基準を上回る労働条件設定のためには、使用者と対等立場で集団的交渉を行える労働組合に役割が重要であるところ、労働組合の組織率は長期的に低下しており、労働組合の活性化が望まれる」とも指摘。

過半数代表の規定

 そして「労働組合が過半数代表として活動する場合の活動時間の確保や、使用者からの必要な情報の提供、意見集約のための労働者へのアクセス保障等の支援」として、過半数代表者の法律上の位置づけや役割、使用者の関与や支援などを定める規定を労働基準法に設けることを提案。
 「労働組合のない事業上も多い中で、過半数労働組合のない事業場で選任される過半数代表者については、選出方法や、労働者集団としての意見を伝える役割・能力等に課題があることなどから、その改善が必要」「集団的労使コミュニケーションの課題と改善方法にどのようなものがあるか検討する」
 そして意義と課題について次のように書く。
 「昨今は、働き方の多様化、経済情勢や技術の変化の激しさに更に拍車がかかっている……こうした変化の下でも守るべき原則をしっかりと堅持した上で、法令において定められた最低労働基準としての規制の原則的な水準を守りつつ、多様な働き方を支える仕組みとすることが必要」

ちば合同労組ニュース 第177号 2025年4月1日発行より

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