防衛力強化有識者会議が最終報告書

抜本的強化で総力戦体制の布石

 24年2月に防衛省によって設置された「防衛力の抜本的強化に関する有識者会議」が9月19日に最終報告書を公表した。約1年半の議論を経てまとめられた政策提言。22年12月に国家安全保障会議と閣議で決定された安保3文書を受け、各界から有識者や専門家の協力を得る仕組みとして設置されたものである。

 有識者会議のメンバーは、元防衛省幹部や防衛関連企業の幹部が並び、防衛力増強ありきで政府方針の加速以外の役割はない。構成メンバーの選考過程も明確ではなく、国会での議論もないまま、軍拡を加速させようとしている。

防衛省「有識者会議」の内容が危うい…防衛費の歯止めのない増額や、国際紛争を助長する懸念が晴れずに

継戦能力を強調

 全体としては「防衛力の抜本的強化による経済成長への寄与」が主題だが、「反撃能力」の強調だけでなく、「継戦能力の整備」を問題意識として持っている。近年高まる「台湾有事は長期戦に発展する」との見方を土台に、弾薬や部品の備蓄、防衛産業の強化などを提唱しているのだ。

 安保3文書は、防衛産業について「防衛力そのもの」と位置づけており、報告書は、ウクライナ戦争などを念頭に、弾薬の製造を大幅に増やすことや継続的な補充などの必要性を強調している。

 報告書では、反撃能力や警戒監視能力の強化、装備品調達の高度化、日米同盟や同志国との連携強化、防衛技術・生産基盤の強化、経済成長との好循環、防衛費の目標設定と進捗管理の6提言が示された。27年度までの5年間に総額43兆円とする防衛費のさらなる増額や計画の前倒し、武器輸出ルールの緩和等の議論を要求している。

 提言では、防衛力抜本的強化の7本柱の推進と戦略装備の導入による抑止力・対処力の一層の強化として、無人航空機や無人潜水艇、無人地上車両など、人の操作なしに自律的に、あるいは遠隔操作で任務を遂行する装備品の導入、VLS(垂直ミサイル発射システム/多数のミサイルを発射できる)を搭載した潜水艦の導入などを提言した。

 特に潜水艦について「長射程ミサイルを搭載し、長距離・長期間の航行を可能にすることが望ましい」と指摘し、次世代動力の活用を求めている。明記はしていないが、原子力を指す。原子力潜水艦は核ミサイルを搭載した長期の隠密行動が任務で、核武装国以外は保持していない。

〝大砲もバターも〟

 また報告書は防衛産業の育成を提唱し「防衛力の抜本的強化と経済成長の好循環」を強調している。防衛と経済は「大砲かバターか」という二者択一ではなく、防衛費の増額が防衛産業の強化や雇用の拡大に波及効果をもたらすとの主張を展開している。

 さらに、防衛力強化と経済成長の好循環を作り出すとして、民間投資を呼び込む「防衛公社」や「防衛ファンド」の検討を要求し、武器などを製造する「国営工廠(工場)」の導入も提案している。戦前の軍需体制を想起させる提言となっている。

 報告書を受け取った中谷防衛大臣は、防衛省で「真摯に受け止め、抜本的強化をさらに進めるにあたり大いに活用したい」と述べた。

ちば合同労組ニュース 第184号 2025年11月1日発行より

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