モームリ社長逮捕が暴いたビジネスの闇

労働組合か、それとも退職代行業か
「会社が辞めさせてくれない」との若者のニーズに応え、一大ビジネスに急成長した退職代行サービス。先駆企業「モームリ(株式会社アルバトロス)」は2万2千円で退職事務を肩代わりする仕組みで拡大した。大手企業の15・7%が代行経由の退職を経験し、業界全体で100社を超える規模に。モームリは1日約50件の相談をこなし、のべ4万件以上の実績を誇ったが、2月3日、谷本社長らが弁護士法違反(非弁行為)の容疑で逮捕された。その後、起訴され関連した弁護士も在宅起訴されている。この問題は、相談を受けることが多いユニオン・合同労組にとっても無縁ではない。

退職代行業の実態
退職代行は本来、本人に代わって通知するだけであり、会社との交渉(引継ぎや退職金等)は弁護士や労働組合の領域である。しかしモームリは、提携弁護士への紹介料として1件1万6千円のキックバックを受け取っていた。弁護士法では非弁護士による法律事務の斡旋を禁止しており、このスキームが法に抵触したのである。
谷本社長は自らを「ブラック企業から労働者を救う慈善企業」のように装ってきたが、実態は悪質な営利企業だった。「交渉しなければ違法ではない」と称して展開したが、実際の退職の場面では当然トラブルが多発。対応するモームリ社員もまた精神的負担からパワハラや叱責が蔓延する職場に置かれ、社員自身が別の代行業を使って辞める例まで報じられた。
利用者からも「2万円払っても解決しなかった」とのクレームが相次いだ。一方で社長の年収は1・5億円とも言われ、タワマンで豪奢な生活を送っていた。実際には困窮する労働者を食い物にする貧困ビジネスだったのだ。

代行主義を超えて
退職代行問題は、若者を追い詰める会社と、それを商機にする業者の双方を生んだ現代社会の象徴でもある。「辞めさせてくれない」ほど追い詰めるブラック企業の増加が背景にある。また若者の間に「嫌なら早く次へ」という価値観が広がっていることも見据える必要がある。
モームリは「労働環境改善組合」という架空の労働組合を偽装し、法の網をかいくぐろうとした。この詐欺的行為は労働組合のイメージダウンにも繋がった。
日本の労働法は集団的労使関係を想定し、「辞めること」を前提とした個人のニーズに十分応えられていない面は確かにある。この「ズレ」には真摯に向き合うべきだ。
しかし、社会を変えるのは労働組合しかない。代行業が増えても会社の体質は変わらない。労働組合が「代行主義」に陥れば変革は遠のく。労働組合はあくまで職場にこだわり、持続的な労使関係の構築と変革を訴え続けるべきだ。

労働組合の役割とは
そもそも法律上は14日前に届けを出せば辞められる(基本的には即日も可能)。代行を使わずとも退職はできる。会社と対決し、そこで生じるトラブルを乗り越えることは、労働者の人生において無駄にはならないはずだ。
もし労働組合が代行業のように手数料を取ってサービス化すれば、労働組合は腐敗し、組織として崩壊する。組合の役割は当事者の代わりに動くことではなく、労働者本人の力を引き出すことだ。
ちば合同労組ニュース 第188号 2026年3月1日発行より
