「初の女性首相」誕生で進む 保守的・復古主義的な政治

総選挙での自民圧勝劇。これを後押しした一つが「初の女性首相」。男性議員が多数を占める自民党に変化の雰囲気を醸し出した。自民に投票した17%が「高市首相が女性だから」と答えた(朝日新聞)。
しかし、実際に高市首相の女性政策についてはあまり知られてはいないが、あらためて「高市首相と女性政策」のテーマでまとめてみたい。

伝統的家族制度の堅持
高市首相が信奉する英サッチャー(英国初の女性首相)。サッチャーは市場原理に傾斜し国有企業の民営化、規制緩和と減税、福祉削減を強行した。何より労働組合を敵視し、炭坑労組のストを抑えるため労組の権利を縮小した。
復古的な家族制度の導入でも知られ、中曽根政権も年金制度改革のモデルとした。なぜ家族制度なのか? それは一言でいえば、社会保障費を抑え家族に矛盾を転嫁するため。「共助」ではなく自助ありきというわけだ。
自民党の憲法改正草案(2012年)では、第24条に「家族は社会の自然かつ基礎的な単位として尊重される」「家族は互いに助け合わなければならない」という条文(家族保護条項)の新設をもりこむ。これは「個人の尊厳」を基本とする現行憲法に対し、家族の相互扶助を強調する。高市首相がめざす改憲とはこういう方向性だ。
地方では、少子化対策として20代での結婚や出産をうながすセミナー=プレコンセプションケア(受胎前・妊娠前ケア)、コミュニケーション能力アップのための婚活セミナー、AIを使ったマッチングシステム、出会いの場を演出する婚活イベント=官製婚活が勢いを増す。戦時下というべき新たな家族主義「産めよ増やせよ」の政策である。
同時に、LGBTQへの敵視だ。2026年中に同性婚をめぐる最高裁判決が下される見通しで、日本における婚姻の平等実現に向けた最大の分岐点と目されている。全国で提起された一連の訴訟は、2025年11月の東京高裁で合憲判決が出たものの、それまでの5高裁では違憲・違憲状態とされ、司法判断が分かれている。多様な家族のあり方を認めない極右政権を前に、司法が権力者への忖度や激しいバックラッシュをしかけてくる可能性が高いと言われている。
選択的夫婦別姓に反対
象徴的なテーマが選択的夫婦別性。95%の女性が改姓する現状はどう見ても不平等。仕事や生活上の不利益は女性に。国際的にも問題視されている。選択的夫婦別性制度には世論調査で約7割が賛成、制度実現まで改姓を避けるために婚姻届を出さない「結婚待機」者は58・7万人に及ぶ。
これに頑強に抵抗したのが高市ら極右勢力だ。高市首相は十数年間にわたって選択的夫婦別姓反対の運動をしつづけてきた。石破政権が議論を進めたが政権交代で失速。男女共同参画基本計画(第6次)は「旧姓の通称使用の法制化」を求める文言を、高市首相の意を汲み内閣府が独断でねじ込んだ。選択的夫婦別姓を二度と持ち出させないために、今国会で旧姓の通称使用法案提出の方向だ。
なぜここまでやる? 彼らは「別姓は家族を崩壊させる」と言う。しかし実際に家族を崩壊させているのは、非正規雇用や格差社会である。子どもも産めない、安心して働けない日本社会の惨状である。
高市首相は皇室典範の改正も打ち出した。「皇族には認められていない養子縁組を可能とし、皇統に属する男系の男子を皇族」として、女系天皇を阻止したい構えだ。
この2つの政策に国連の女性差別撤廃委員が「性差別」と日本に勧告した。「女性活躍」と言いつつ高市首相は、明治以来続く戸籍制度の維持――男性優位な社会を堅持し天皇を頂点とした伝統的家族制度を維持することで頭がいっぱいなのだ。これは改憲・戦争―大軍拡と一体で進む。
極右政治と女性政治家
女性政治家と極右的主張の結合は日本だけの現象ではない。伊メローニ首相、独ワイデルAfd党首、仏ルペン国民連合党首などの女性リーダーの台頭は「フェモナショナリズム」と呼ばれる。
彼女らは女性の権利擁護の主張と並行しながら、排外主義や軍拡など極右的主張を正当化する。あるいは自らは特権的立場を保持しながら他の女性には性差別的・伝統的な役割を求める。とりわけ、このなかでヨーロッパでは、女性の政治リーダーのなかで、大軍備・軍拡(女性への徴兵)などが推し進められてきた。
今後、高市政権下で女性の社会的地位がさらに後退する可能性もある。いまだに女性労働者の賃金は男性の7割に抑えられている。地方社会ではさらに深刻だ。これから高市独裁体制のもとで予想される経済危機と改憲・大軍拡―核武装・徴兵制の戦争政治と共に注視すべき課題だ。


