映画紹介『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』

映画紹介『ノー・アザー・ランド 故郷は他にない』
パレスチナ・ガザ地区への侵攻から1年半。この映画はイスラエル占領下の暴力の日常を記録したドキュメンタリー。今年3月、アカデミー賞を受賞し広く世界に知られるように。
舞台はヨルダン川西岸地区南端のマサーフェル・ヤッタ。2020年以降、イスラエル軍の軍事基地建設のために、イスラエル軍による暴力的な家屋の撤去、電力設備や井戸などの破壊が連日続く。
抵抗の意思を込め、暴挙をカメラで撮影し続けるパレスチナ人のバーゼル。事実を世界に広く知らしめたいとイスラエルから越境したユダヤ人のジャーナリスト・ユヴァル。この2人が、日々加速する弾圧と破壊への抵抗するなかで深まる友情を中心にストーリーが進む。
だが侵略する側とされる側の立場を背負った2人の関係は対等ではなく、その溝は深い。アップロードした動画の閲覧回数が少ないと焦るユヴァルに対し「熱くなるな。焦るな」「忍耐が必要なんだ」とバーゼルが諫めるシーンが印象的だ。
子どもの頃からイスラエル軍の暴虐と日常的に直面し、この地から移動することも叶わず生きていかねばならない環境はあまりに過酷だ。映画を見れば、この何倍もの過酷であろうガザへの想像力を少し持てるはずだ。
監督の1人バラール氏がアカデミー賞を受賞した後の3月24日、彼は入植者から暴行を受けイスラエル軍に拘束される。トランプ大統領が「ガザをリゾート地にする」と発言した直後だった。受賞したことへの「報復」だった。映画という文化でさえ奪いつくそうとするイスラエルの暴力性を現在進行形的に示すものとなった。
(ちば合同労組ニュース 第178号 2025年5月1日発行より)
