ドイツで徴兵制復活の動き

自衛隊に名簿提供広がる 安保3文書後
26年から兵役検査の義務化
ドイツ政府は徴兵制度再開も視野に入れ、26年から新たな兵役制度を導入する法案を閣議決定した。ドイツは11年に徴兵制を停止していたが、国防体制強化の一環として復活の可能性が示された。
具体的には、18歳の男女にアンケートを送付し、兵役希望の有無を確認する。男性には回答を義務づけ、女性は任意とする。志願者の中から適性検査を行い、対象者を兵役に参加させる仕組みだ。さらに27年7月からは、希望に関わらず18歳男性に適性検査を義務化し、緊急時に備える。
ドイツ軍は、米トランプ政権の要求で軍拡に転じたNATOの基準に沿って兵力拡大を進め、現在約18万1千人の兵士を最大26万人に、予備兵も20万人に増員し、総勢46万人体制を目指す。
法案はまず自発的参加を基本とするが、必要があれば議会承認を経て徴兵制再開を可能にした。当面の目標は26年に2万人、30年に3万8千人と設定されており、未達の場合は徴兵制復活に踏み切る可能性もある。

欧州で軍拡の波
徴兵制は、冷戦終結後に世界的に廃止の流れが強まったが、ロシア、ウクライナ、イスラエルなどは維持。ミャンマーの徴兵制復活は記憶に新しい。特に欧州では軍備強化の動きが顕著で、ポーランドは09年に徴兵制を停止したものの予備兵増強のため希望者を対象に訓練を開始。バルト三国や北欧でも徴兵制が復活し、リトアニア(15年)、スウェーデン(18年)、ラトビア(24年)が再導入した。フランスでもマクロン大統領が兵役義務の再検討を進めている。 一方、日本でも自衛官募集をめぐる問題が深刻化している。全国自治体の約66%、1152自治体が高校生や大学生の名簿を自衛隊に提供しており、住民基本台帳情報が電子データや宛名シールで渡される例が増加している。
かつての徴兵制下では役場の兵事係が戸籍を基に20歳の青年を抽出し、名簿を国に提出した。安保3文書で防衛戦略や整備計画にも「人的基盤の強化」「自治体との連携強化」が明記された。

徴兵制賛成の石破
7月の参院選では参政党が核武装や徴兵制に言及し議論を呼んだ。だが石破首相も、かつて防衛庁長官時代(02年)に「徴兵制が憲法違反であると言う議論には賛成しかねる」「意に反した奴隷的な苦役だとは思わない」と発言している。参政党とほぼ同じ主張をしているのだ。
徴兵制の問題は過去や外国の例外的事象ではない。予備自衛官制度の拡充や上記のドイツのような選抜的兵役訓練などが浮上する可能性は高い。もちろん徴兵制導入可能性も温存されていることは決して忘れてはならない。

ちば合同労組ニュース 第183号 2025年10月1日発行より
