若者の雇用についての考察
高卒就職者は90年61万人→23年14万人に
1990年代頃から若年労働市場は変容している。とはいえ新規学卒者の一括採用を特徴とする「日本型」雇用がなくなったわけではない。
少子化で新規学卒者は減少し、大学や専門学校進学率は増加。高卒就職は大きく減少した。また若者の早期離職傾向は高止まり、新規大卒者の3割が3年以内に離職する。
日本型雇用は一般的に、企業が学歴別に新規学卒者の定期採用を行い、学生は卒業と同時に企業に一斉入社する慣行がある。一括採用された新規学卒は長期雇用を前提とした企業内訓練を通じて技能を形成する。
他方、この慣行は、バブル崩壊後の就職氷河期やリーマンショック直後など不況期に卒業した世代にとっては大きな影響を生じさせた。

高卒就職の場合
高卒就職は、企業がハローワークに求人票を出し、それをもとに高校側が生徒に就職指導を行い企業に推薦、それを受け企業が就職試験を実施する。学校と企業の継続的な関係が形成され、企業が特定の高校に求人を出したり、1人1社制による学校推薦などの慣行が生じた。
00年代頃からこうした慣行に批判や矛盾が増え、また早期離職で非正規雇用を余儀なくされるケースが増えた。最近は生徒の自己選択を重視するとも聞くが、従来の就職慣行が基本的に維持される。
他方、大卒就職は求人サイト・求人情報を利用した自由応募が主要な就職経路だ。かつては、高校同様に学校推薦も機能していたが、近年は大学を経由しない求人・求職が拡大、ウェブサイトからのエントリーが最も多い。
高校卒業者数は1992年の180万人をピークに23年には96万人に減少。90年に61万人だった新規高卒就職者は04年に21万人に規模を縮小した。就職氷河期を経て大幅に減少したのだ。その後も減少は続き23年に14万人。
大学進学は増え、90年の31万人から23年に55万人に増加した。大学進学率は90年に男性22・2%、女性13・5%が、23年に男性58・5%、女55・1%に増加した。
高校学卒者の新規就職率は90年時点で男性34・2%、女性36・2%だったが、23年に男性17・7%、女性10・6%に。

大卒就職の場合
大卒労働市場では、リクルートワークス研究所が24年4月に発表した「大卒求人倍率調査」によると、バブル期には3倍近くあった大卒求人倍率は、就職氷河期に1倍を割り込み、その後は2倍程度まで回復するが、08年のリーマンショックで1・2倍程度まで低下し、その後は緩やか上昇し、コロナ期の落ち込みを経て現在は1・8倍近くまで回復している。
しかし企業規模で状況は違う。従業員数千人以上の大企業では企業側が有利な「買い手市場」が続き、中小企業で労働者側に有利な「売り手市場」となっている。金融業やIT系では求人倍率は低く、建設業や流通業では数倍の求人倍率となっている。

失業や早期離職
若者の失業や早期離職の問題にも関心は集まる。
就職氷河期やリーマンショックなどの雇用状況の一時期的変化はあるが、若者の早期離職は傾向としては大きな変化はない。高卒では00年代前半まで3年以内に5割が離職する状況で、その後も4割前後で推移している。大卒は3割程度が離職する。
離職理由としては、収入の少なさや労働条件の悪さ、仕事に向いていないなど。近年は人手不足が高まり、労働条件が悪く低賃金の職場から若者が離れている可能性が指摘されている。
若年雇用は非正規雇用も重大問題だ。若者の非正規雇用率は15歳から34歳で見ると、男性は、02年15・4%から22年22・4%に拡大。女性は40・2%から36・5%に低下した。男性は非正規雇用が増え、女性は正規雇用が拡大しているが、女性の非正規率が10ポイント以上高い。
最近は転職が一般化してきたが、正社員から正社員への転職は拡大基調だが非正規から正規への道は狭い。
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バブル崩壊やリーマンや新型コロナ感染症などいろいろあったが、近年は少子化や人口減少が進み、労働市場への動員対象として若年雇用政策が展開されている。
リクルートワークス研究所は「2040年に110万人の労働供給不足」を予測。27年ごろから労働供給量は急激に減少する局面に入る。22年に約6587万人だった労働供給は30年に約6337万人、40年に約5760万人へと急激に減少する。
エッセンシャルワーカーの担い手が減り、建設業や運輸業も大きな困難が予想される。介護や福祉サービスが供給できず、道路や水道などのインフラ設備の維持も困難になる。地場産業の消滅ななど深刻な問題が出てくる。
ちば合同労組ニュース 第175号 2025年2月1日発行より