会計年度任用職員/毎年雇止め根本矛盾持つ非正規制度

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会計年度任用職員について

毎年雇止めの根本的矛盾を持つ非正規制度

 2020年4月から会計年度任用職員制度が導入されました。年度末を前に各地で雇止めを通告され、地域ユニオンへの相談も増えています。
 全国の自治体労働者数は、90年代半ばをピークに市町村合併や民営化などで減少し続け、さらに正規から非正規への置き換えが著しく進行しています。総務省調査では会計年度任用職員は百万人を超え、全職員の半数に近づいています。日本全体の非正規の割合よりも高く、8割が女性労働者と言われています。
 自治体で働く非正規公務員は、一般事務だけでなく保育や病院、給食や図書館、ケースワーカーなど様々な分野・職種へ広がり、恒常的かつ専門的な業務を担っています。
 近年増えているのが相談業務です。DV被害者が相談する婦人相談員や、児童虐待への対応を行う家庭児童相談員も大半が非正規です。住民の生活を支えるエッセンシャルワーカーの多くも会計年度任用職員が担っています。
 会計年度任用職員制度は、これまで自治体によってバラバラに運用されてきた非正規公務員制度を、地方公務員法が全面適用となる一般職非常勤職員に統一したものです。
 制度導入にあたり「期末手当が支給でき、非正規公務員の処遇が改善する」「公務員法で身分が守られるので雇用が安定する」と宣伝もされましたが、まったく逆の状況になっています。
 「会計年度」とあるように任用期間が1年間で、更新しないことに法的根拠を与え、非正規公務員の制度化です。しかも非正規とはいえ一般職地方公務員であるので、公務員としての義務や規律、処罰は正職員と同じです。

官製ワーキングプア

 またフルタイムとパートタイムの規定があり、多くの会計年度職員がフルタイムではなくパートとして運用されているのが実態です。
 それどころか制度が始まって以降、パートで働く労働者が急激に拡大しています。フルタイムで6か月以上勤務すると退職手当などが発生することを回避しているとも指摘されています。パート化による勤務時間の短縮といっても1日15分だけ短縮するなど極めて卑劣なやり口です。 
 賃金面でも正規と非正規の差が大きく、いわゆる「官製ワーキングプア」と言われる貧困の原因となっています。
 いずれにせよ、今後、公務職場で働く労働者の大半を会計年度任用職員に置き換える攻撃はさらに強まると考えられます。

毎年の雇止めと公募

 会計年度任用職員は公募が原則とされます。実際には公募によらない再度の任用も行われていますが、多くの自治体で3年とか5年の上限が設けられており、制度開始から最初の3年を迎える23年3月末には多数の雇止めが懸念されています。
 なんの手続きも取らずに任用を繰り返していると労働者に雇用継続の期待権が生じると多くの自治体側は考えており、これを回避するために3~5年ごとに一般求職者とともに公募試験を受けさせられ、試験に合格しないと雇用が継続できない仕組みになっています。
 制度導入後、業務の外注化などを理由に会計年度任用職員の雇止めや削減も頻繁に生じています。フルタイムからパートへの切り替えも多数発生しています。
 多くの会計年度任用職員が更新されるかどうか不安な状況が続いています。
 再度の任用のたびに試用期間が設けられたり、翌年度の再度の任用にあたり人事評価が行われることなど、制度自体が非正規労働者に対するパワハラの温床になっていることも重大です。

大矛盾を抱えた制度

 会計年度任用職員の正規雇用化要求はまったく当然です。公務職場は「任期の定めのない常勤職員を中心とする公務の運営」が原則です。当面する課題として、雇止めは許さない、パートタイム化を許さずフルタイムに戻す、手当や昇給、退職金などの改善など、闘いのテーマはたくさんあります。
 会計年度任用職員制度は巨大な矛盾を抱えた制度です。闘いの火種は絶えることなく戦線は拡大していくはずです。自治体労働運動として決定的かつ戦略的な闘争課題であり組織化のテーマです。ユニオン運動にとっても大切な課題です。
 現業職員についてはユニオンによる団体交渉や労働委員会による救済などを積極的に位置づけて闘うことはいうまでもありませんが、労働組合法が適用除外となっている職員についてもユニオンと自治体との間の団体交渉を排除する規定があるわけではないので、必要があれば交渉を申し入れれば良いと思います。
 職員団体の結成などの多様な戦術もあると思います。

ちば合同労組ニュース 第140号 2022年3月1日発行より