書籍紹介 「使い捨てられる教師たち」(佐藤明彦著)

本の紹介


非正規教員の実態を暴く
 1年ほど前の出版だが問題意識があり、手にした。
 1年契約で雇用され正規教員とほぼ同じように働く非正規教員は全国に10万人以上おり、全体の2割に迫る。小学校では学級担任を務め、中高では部活動顧問も。生徒や保護者から見れば正規教員と何も変わらない。
 著者は、非正規教員の増加こそが教員不足の最大要因と指摘する。問題の発端は小泉内閣が推進した三位一体改革で、公立学校を支える財政的基盤が脆弱化し、結果として非正規教員が増加、教員不足が至る所で発生したのだ。

多忙な非正規教員
 採用試験に受からない本人が悪いとの自己責任論はまとはずれだ。根本的な理由は後述するが、そもそも4~5月は年度初めの行事も多く、学級を順調に離陸させるために時間も必要だ。採用試験は7月で学期末の多忙さの只中。1年契約で学校異動も多く1学期は覚えることがたくさんある。日常の仕事が忙しく筆記試験の勉強時間が取れず大学生に勝てない。
 採用試験に合格した正規教員は1年目に初任者研修があるが、非正規の新人は研修も十分に行われない。毎年3月になると翌年度も雇ってもらえるか不安な毎日…。
 著書は、教育行政において非正規教員に対する育成の視点が決定的に欠けていることを強調する。仕事に専念できる安定的な待遇もサポート体制もない。学級崩壊に陥っても誰も助けず、いつ雇止めになるか分からない。サポート役の先輩も励ましあう同期の仲間もいない。

増える非正規教員
 学校には正規教員のほかにさまざまな任用形態の非正規教員がいる。
 まず臨時的任用教員。正規教員との一番の違いは雇用期間が最長1年。民間企業であれば5年で無期契約に転換されるが臨任にはそのような規定はなく10年以上も臨時的任用教員で働き続ける人も。
 臨任の業務は正規とほぼ同じ。職員会議に参加し、授業以外の公務分掌(学校行事の運営や外部団体との調整など)もある。臨時的任用教員は正式な法令用語ではなく自治体によって呼び方が違う。千葉県では「臨時的任用講師」と呼ぶ。
 他に産休・育休代替教員や60歳で定年を迎えた後の再任用教職員もいる。さらにパートタイム勤務で授業だけを受け持つ非常勤講師がいる。講師は副業が認められる。
 産休・育休代替や再任用も増えているが、臨時的任用教員は07年度の3万9345人から20年度は5万742人と過去最高水準で高止まりしている状況だ。

非正規化の政策が
 臨時的任用教員がなぜ増えるのか? 将来的に子どもの数が減り人員余剰が出たときに調整できるように一定割合の非正規教員を雇用する政策的なものなのだ。特に首都圏など人口流動が激しい地域では予想が難しく、結果として将来の児童生徒数を低めに見積もる。定年後にどれぐらいの人が再任用で残るのかも読めない。採用試験合格者の辞退も予測が難しく採用試験の合格者数を低めに出し、その分を非正規で補うのだ。
 もう一つの理由として、団塊ジュニア世代に合わせて教員の大量採用が行われ教員の年齢構成に大きな偏りがある。その層が大量退職を迎える時期が来ているのだが、その退職補充を臨時的任用教員で代替しているのだ。