山崎製パン工場 61歳女性事故死 地元ユニオンとして思うこと

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山崎製パン工場 61歳女性事故死 地元ユニオンとして思うこと

 千葉では学生時代のバイトネタでよく話題になる山崎製パン。千葉港の工場で2月、61歳の女性がベルトコンベヤーに挟まれる死亡事故が起きた。『千葉日報』に長めの記事が掲載され、バイト経験者などの声も報じられた。
 「商品が流れないよう必死に追いかけた」「すごいスピードだった。停止ボタンもあったけれど、押したら皆から白い目で見られた」「ずっと立ちっぱなしで、精神的にも肉体的にも1番つらかった。二度とやりたくない」
 ――製造ラインの速さや安全管理、作業内容の過酷さの一端が分かる。SNSでも「いつか起こると思っていた」と死を嘆く声が多い。なぜこのような事故が起きたのか?
 山崎パンはシェア率4割を持ち、年間売上高は1兆円を超え、国内最大、世界2位の巨大独占資本。コンビニやスーパーに「ランチパック」「丸ごとソーセージ」など有名商品が並ぶ。能登震災でも被災地に大量のパンを届けたことがニュースになった。
 しかし事故については山崎パンは「調査中」と原因を公表しない。労働環境を見直すとか安全管理を是正したとの報道もない。痛ましい犠牲者が出ても工場のラインは止まることなく流れていく。
 使い捨ての労働
 で成り立つ工場

 山崎パンは頻繁に募集を行っており短期労働者ばかり雇用される。パンの向きを変えたり検品作業も人海戦術。オートメーション化よりも低賃金バイトを雇った方がコストが安い。非正規労働で初めて成り立つビジネスモデルなのだ。
 効率が優先され安全性は軽視される。労災隠しも横行している。申請にも非協力的。社員は労災を申請すれば昇進できない。あまりにキツく深夜に仕事を放棄(バックレ)するバイトが後を絶たない。労働組合はレクレーションばかりで何もしないとの声も。闇が深い。
 社会に殺された
 死亡した女性は山崎製パンだけではなくこの社会に殺された。同様の事件は日本中で増えている。22年2月、新潟県の菓子メーカー「三幸製菓」のせんべい工場が全焼し6人のアルバイト労働者が死亡した。同6月に、すき家の夜勤で倒れて死亡、3時間も誰も気付かなった事件も。いずれも死亡したのは高齢女性の労働者で食品関係の仕事。ひと昔前では考えにくい事故だ。
 高齢になっても過酷な現場で働かなくては生きられない日本社会。最優先されるべきは人の生命だ。こういう社会をつくったのは誰なのか、状況を変える力はどこにあるのか。真剣に考えねばならない。
 労働運動は人間らしく生きられる社会をめざす運動だ。今春闘は満額回答が報じられる一方で、非正規・中小は完全に見捨てられている。連合やマスコミは取り上げない。
 春闘結果を受け物価高騰が予想される。格差はますます広がるばかり。あらためて労働組合の真価が問われている。