映画紹介『ゴミ屑と花』

 23年に制作された30分の短編映画。深夜の横浜の街を舞台に、ゴミ収集車で働く労働者の一夜を描いた物語。

 ごみ収集車(パッカー車)はゴミを積み込む際に圧縮する機能を持つ特殊なトラック。水気のあるものを運ぶ際には、道路に汚水を垂らさないよう汚水タンク付きのものもある。

 航空自衛隊パイロットを辞め家族を養うためにゴミ収集の仕事についたばかりの尾崎。研修期間中、年下の指導員の橋本と2人で深夜にゴミの収集作業に従事する。収集するのは家庭ゴミではなく店舗や会社で生じた事業系ゴミ。収集場所は200カ所を超える。尾崎は、重く汚く悪臭が漂うゴミに圧倒される。

 「ゴミ屋」と悪態を投げかけるスーツ姿の酔っ払い、感謝の言葉と共に飲み物を手渡す店員。憤りや戸惑いを隠しきれず「みんな勝手にゴミがなくなると思ってんじゃないかな」と呟く尾崎に対し。橋本は「じゃあ、尾崎さんは、これまで収集員に感謝して生きてきました?」と投げかける。

 口数が少なくピリついた雰囲気を漂わせる橋本。ゴミ袋をパッカー車の投入口に投げ入れる無駄のない所作と新人の尾崎との対比にも緊張感が漂う。だが次第に、寝静まった住宅街の手前でエンジンを切る橋本の心遣いが見えてくる。短編映画の割に様々なエピソードが挿入され、橋本は「ゴミって面白い。人の心を映す鏡みたい」と語る。

 年齢も性別も経験も違う尾崎と橋本による深夜のゴミ収集車ロードムービー。やがて朝を迎え、尾崎の心情に生じた変化が描かれる。監督が体験取材も行ったリアリティがある映像。全編、深夜の撮影が醸しだす雰囲気も悪くない。

ちば合同労組ニュース 第180号 2025年7月1日発行より

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