映画紹介『大いなる旅路』

 大正末期から戦後の盛岡を舞台に、蒸気機関車の機関士・岩見浩造(三國連太郎)の約30年の人生を描く。

 同期の佐久間が東京鉄道教習所の試験に合格する一方、不合格となった浩造は仕事に身が入らない。ある日、先輩機関士の橋下と乗車した貨物列車が雪崩を避けきれず脱線転覆。浩造は助かるが、橋下は「事故を知らせろ」と言い残して亡くなる。事故を機に浩造は「列車を守る人がいるから乗る人は安心して眠れる」ことに気づき、仕事への姿勢を改める。

 鉄道の安全に生涯をかけることを決意した浩造だが、時代は満州事変から日中戦争、やがて第2次世界大戦から日本の敗戦へと移り変わる。招集された長男の戦死、父親を継いで運転士になった次男、そして戦後の労働運動の様子なども物語の中で触れられている。

 映画のモデルとなったのは、実際に1944年に起きた山田線(盛岡から三陸地方を結ぶ路線)の事故である。脱線シーンは、実際に蒸気機関車を走らせ、スイッチバックで横転させて撮影された。橋下機関士が壊れた懐中時計を手に「これが発生時刻だ。すぐに知らせに行け」と指示する場面は、実際の事故エピソードに基づく。

 浩造の乗務する列車は主に貨物列車で、当時の物流の中心が貨物列車であったことが分かる。戦争中の石炭の質の悪さなども描かれ、時代背景も巧みに表現されている。

 作中には、C51系やD51など様々な蒸気機関車が登場する。終盤では、次男(高倉健)が運転する特急「こだま」に浩造が乗り、名古屋の娘に会いに行くシーンが富士山を背景に描かれている。

ちば合同労組ニュース 第184号 2025年11月1日発行より

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