映画紹介『逃げきれた夢』

映画紹介『逃げきれた夢』
 北九州の定時制高校で教頭として働く末永(光石研)。元教え子が働く定食屋で会計を忘れる。認知症で記憶が薄れ、これまでのように生活できなくなってしまう。
 だが「これまで」でそんなに素晴らしい日々だったか?(公式サイトから)。妻との関係は冷え切り娘にも相手にされない。定年まで1年、人生の岐路に立つ末永。認知症の症状はどこまであるのか。定食屋の会計忘れも確信犯で、教え子に認知症を伝えたかっただけなのか。家族を試す言動に「気持ち悪すぎなんやけど。どしたん? 死ぬん?」と訝られる
 設定は黒澤明の映画『生きる』に似ている。ただし黒澤映画のように公園を作ったりはしない。定年を前に認知症を患う男が今後の人生を憂い、誰かに認めて欲しいが、それを正直に言うこともできない――そんな人生を見苦しい姿を見せつつ振り返っていく。
 学校では生徒思いの教頭として振る舞う。だがどこか真実味がない。「後悔しないように生きろ」などと教え子たちに語るが、「公務員の先生には分からない」「先生の人生には関係ないと思ってるんでしょう」と言われる。
 周辺から奇妙に思われるほど末永は喋り続ける。相手の反応は構わない。会話は噛み合わない。家族に「学校を辞める」と告げた際、「40年働いてお金を運び続けてきたんだぞ。ご苦労さんくらい言えないか」と切れるが、身勝手さを自覚し「今の発言はなかったことにしてくれ」と謝罪する。
 監督の二ノ宮と光石は北九州出身で撮影も北九州。言葉や風景にリアリティーを追求。「逃げきれた夢」というタイトルも含め、いろいろ考えさせられた。
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