実践的に考える職場と労働法 ハラスメント

その他

実践的に考える職場と労働法

ハラスメントの多くは職場環境の問題から発生

4月に施行されたパワハラ防止法

 労働局の労働相談コーナーでは、職場のいじめ・嫌がらせの相談が増加傾向にある。全国で毎日240人がいじめで労働局に相談に来る。しかし、それでも相談に来る人は被害者のわずか2・2%、氷山の一角なのだ。
 厚生労働省の「2016年度職場のパワーハラスメントに関する実態調査」では、過去3年間にパワハラを受けた経験について32・5%が「ある」と回答している。仕事上のセクハラの相談も年間7000件前後と、以前として多いままだ。
 ハラスメントなどを理由とした精神障害の労災認定は増加している。しかし、多くの被害者は労災制度を知らず、労災請求・認定者はごくわずかにとどまる。認定率も22・8%と低い。
 過去3年間にパワハラを受けたと感じた者のその後の行動として、友人・家族に相談が20%、同僚に相談16%、上司に相談約13%、会社を退職が約13%、しばらく会社を休んだ約6%、何もしないが41%となっている。労働局のあっ旋などのアクションを起こした労働者も、約8割が退職という結果になっているという。

パワハラの背景

 労働政策研究・研修機構(JILPT)による労使ヒアリング調査によれば、パワハラの背景・理由として、「人員削減・人材不足による過重労働とストレス」「職場のコミュニケーション不足」「会社からの業績向上圧力・成果主義」「管理職の多忙・余裕のなさ」などが指摘されている。
 職場の風土として、「残業が多い・休みがとりにくい職場」はパワハラ経験者は39%に対し未経験者21%と差は多い。「失敗が許されない・失敗への許容度が低い職場」は経験者26%、未経験者10%となっている。

防止の措置義務

 セクハラについては従前から男女雇用機会均等法に規定があり、事業主にはセクハラに関する雇用管理上の措置を講じることが義務とされ、①会社の方針の明確化と周知・啓発、②相談体制の整備、③セクハラに係る迅速かつ適切な対応――について措置義務があった。
 新たにパワハラ防止の法制化(パワハラ防止法)、セクハラ関連の法改定があり、大企業については今年6月から施行、中小企業は2022年4月から順次適用となる。

❶事業主に対して、パワハラ防止のための雇用管理上の措置義務の新設

❷セクハラ・パワハラ・マタハラ…に関する国・事業主・役員・労働者の義務の明確化

❸性的志向・性自認に関するハラスメントもパワハラ

❹事業主の対応を指針に提示

❺相談などを理由とする不利益取り扱いの禁止

❻労働局の紛争解決・調停制度

❼事業主は、他の事業主の措置への協力に応じる努力

 パワハラ防止法と呼ばれているのは、かつての雇用対策法が「働き方改革関連法案」の一環で改定されたもの。条文は以下のようになっている(第30条の2)。
 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
 ――となっている。法律の評価はいろいろあると思うが、これくらいは頭に入れておいてもよいのではないか。いずれにせよ事業主にはパワハラに関する雇用管理上の措置義務ができた。男女雇用機会均等(セクハラ)や育児介護休業法(マタハラ)なども同様の規定が盛り込まれた。

組合に相談2%

 職場のハラスメントは、多くは職場環境の問題から発生している。しかし上記の調査(過去の3年間にパワハラを受けた者のその後の行動)で、回答者の22%が組合員であるにもかかわらず労働組合に相談した人はわずか2・2%となっている。
 相談しない理由として「職務上不利益が生じると思った」25%、「上司や同僚との人間関係の悪化を恐れた」13%、「パワハラがエスカレートすると思った」13%となっている。さらに「何をしても解決しないと思った」69%、「経営者や役員などが行為者だった」10%となっている。
 労働組合として大きなテーマであり、また衛生委員会なども含めた取り組みが必要と思われる。

 ちば合同労組ニュース 第125号 2020年12月1日発行より