育児休業など周知・意向確認を義務化

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育児休業など周知・意向確認を義務化

 育児介護休業法 4月から新制度

 今回は、昨年6月に改定された育児介護休業法が規定する諸制度を確認したい。

昨年6月に改定

 育児介護休業法は、91年に「育児休業法」として制定され翌年から施行、95年に介護休業が盛り込まれました。
 99年に労働基準法から女性労働者の保護規定(深夜業・時間外労働の制限など)が廃止されたことに伴い、育児・介護を行う労働者への配慮規定(時間外労働の制限、深夜業の制限、子の看護休暇など)の制度が追加されました。
 法律は今年で施行から30年となります。男性の育児休業の取得率は2020年で12・65%、女性は81・6%。
 4月1日から事業主は、育児休業が取得しやすい雇用環境の整備が義務付けられ、出産の申し出をした労働者に対する個別の制度周知、休業取得の意向を確認する措置が義務づけられました。

意向確認が義務化

 本人または配偶者の妊娠・出産などの申し出を行った労働者に対して、企業は、その労働者に対して、制度周知や休業の取得の意向を確認しなければなりません。配偶者には事実婚も含まれ、妊娠・出産には特別養子縁組や里親なども含まれます。
 これまでは労働者の方から休業取得を申し出る必要がありました。言い出しにくい職場が多いのが現実ですが、今後は、労働者が「妊娠した」「妻が出産する」と申し出た場合、会社側が育児休業などの制度の内容を説明し、「取得しますか?」と確認する義務が生じます。
 育児休業は、原則、子どもが1歳になるまで取得できる制度です。夫婦同時に取得することもできます。有期雇用労働者は、申し出の時点で、子が1歳6か月を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかでない場合について取得することができます。
 今回の改定で有期労働者については取得要件が緩和されました。従前は、引き続き雇用された期間が1年以上が必要でしたが撤廃されました。
 配偶者が育児休業を取得している場合は、子が1歳2か月に達するまでに合計して1年間以内の休業が可能です。つまり夫婦で育児休業を取得する場合は、互いに少しずらして子が1歳2か月になるまで取得できます。
 保育所に入所できないなどの理由がある場合は、最長で子が2歳に達する日まで延長が可能です。今年10月からは、2回に分割して取得することもできます。

出生時育児休業

 さらに男性の育児休業取得を促進する制度として、「出生時育児休業」(通称「産後パパ休業」)が今年の10月1日から始まる。簡単に言えば、子の誕生後、8週間以内に計4週分の休みが取得できる育休の特例措置です。申請も2週間前まで可能、休業の2分割も可能など、従来よりは柔軟な制度ではあります。
 男性労働者が対象ですが、養子の場合などは女性労働者も取得できます。有期労働者も一定の要件を満たせば取得できます。
 育児休業・出生時育児休業を取得した時、受給資格を満たしていれば、原則として休業開始時の賃金の67%(180日経過後は50%)の育児休業給付を受けることができます。一定の要件を満たしていれば、社会保険料については、労働者の本人負担分と事業主の負担分、ともに免除される。 

 その他の制度

 育児休業以外にもさまざまな制度がある。

①育児短時間勤務制度

 3歳に満たない子を養育する場合、1日の所定労働時間を6時間に短縮することができる制度。

②所定外労働の制限

 3歳に満たない子を養育する場合、所定外労働を制限することを請求できる制度 

③時間外労働の制限

 小学校就学前の子を養育する場合、時間外労働を1月24時間、1年150時間以内に制限することを請求できる制度

④深夜業の制限

 小学校就学前の子を養育する場合、午後10時から午前5時の深夜業を制限することを請求できる制度

⑤子の看護休暇

 小学校就学前の子を養育する場合、1年に5日(子が2人の場合は10日)まで、病気・ケガをした子の看護、または子に予防接種・健康診断を受けさせるための休暇制度(時間単位の休暇も可)

相談窓口も義務化

 さらに4月1日から、育児休業の申し出が円滑に行われるようにするために、事業主は以下のいずれかの措置を講ずることが義務付けられた。

①育児休業・出生児休業に関する研修の実施
②相談窓口の設置 
③自社の労働者の取得事例の収集・提供 
④自社の労働者へ取得促進に関する方針の周知

 ちば合同労組ニュース 第144号 2022年7月1日発行より