人手不足の打破には労働組合が必要だ
3年に1度行われる4月実施の介護報酬の改定が+1・59%と公表された。内訳としては介護職員の処遇改善分が+0・98%、その他の改定率が+0・61%で「介護職員の待遇改善」を旗印に過去2番目の上げ幅となった。
厚生労働省は、介護職員の平均月収で24年度約7500円、25年度6千円の底上げができると言っている。とはいえ、そもそも全産業平均より約7万円も低いので、他産業の賃上げ動向次第で格差は広がる可能性もある。
低賃金に加えて介護業界の人手不足は深刻だ。22年度において介護職から離職する人が働き始める人を上回る「離職超過」に陥った。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」を目前に控える状況での離職超過は深刻だ。
介護業界における離職超過は初めての事態だ。高齢者数がピークを迎える2040年度には約280万人の介護職が必要で、厚労省の試算では69万人が不足する。
今回の改定では、「職員の負担を減らす」と言って、見守り機器や介護ロボットの導入などに報酬が上乗せされた。さらに職員の配置基準の緩和も認めた。
人手不足が特に深刻なのが訪問介護だ。ヘルパーの有効求人倍率は22年度に15・53倍。人手不足が原因の倒産も増えている。高齢化も急速に進む。
介護労働者の声を
今回の改定で賃金が上がり人手不足が解消されるか、現場の介護労働者は懐疑的だ。少なくとも他産業平均と同じ賃金水準は必要だ。介護労働者自身が声を上げ、職場や地域で団結し、政治的な力を獲得していくことも必要だ。
1月1日に発生した能登半島地震は過疎化と高齢化が進む地域を直撃し、次第に困難な状況が伝えられてきた。
半島部という地理的困難さはあるとしても、近年、自治体の合併と職員の削減で対応が後手に回ったことや介護施設などの苦境が伝えられる。全国的な人手不足で支援体制が脆弱で福祉避難所の開設もままならないとも聞く。
この状況が介護だけでなく日本社会に何をもたらすか?他人事で済ませられる人はいないと思う。(組合員M)
(ちば合同労組ニュース第163号 2月1日発行より)