反動的運用粉砕し待遇改善を
同一労働・同一賃金 4月から中小企業も
昨年4月に改定施行された「短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律」(パート・有期法)。今年4月から中小企業にも適用される。パート・有期法は、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保を目指すとして改定された。ポイントは以下の3つ(以下の条文はすべてパート・有期法)
第一に、同一企業で働く正社員(通常の労働者)と非正規労働者(パートや有期)との間で、基本給や賞与、手当、福利厚生などのあらゆる待遇について不合理な差を設けることが禁止されます(8条)。
第二に、労働者の待遇に関して事業主の説明責任が強化されました。事業主は、非正規労働者から、正社員との待遇差の内容や理由について説明を求められた場合には、説明が必要です(14条2項)。
第三に、労働局長による紛争解決の援助と第三者機関である紛争調整員会による調停の仕組みが設けられました(24条、25条)
最高裁の反動
従前から労働契約法やパート法で雇用形態の違いによる不合理な待遇差を禁止する規定があったのですが、法律ごとに規定がバラバラだったのを、パート・有期法にまとめ、雇用形態にかかわらない「均等待遇」と「均衡待遇」という考え方が示されました。
【均衡待遇】賃金や一時金、手当といった一つひとつの待遇ごとに、①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲、③その他の事情の3つの考慮要素を踏まえ、不合理な待遇差を禁止
【均等待遇】①職務内容、②職務内容・配置の変更範囲の2つの考慮要素が同じ場合は、すべての待遇について差別的取扱い禁止
――となりました。非常に難解な規定ですが、いくつか重大な問題があります。
まず、待遇差が不合理であるかは、待遇全体の比較ではなく、一つひとつの待遇ごとにその待遇の性質・目的に照らして判断するということが明確化されました。
そして不合理な待遇差はダメだが、一つひとつの待遇について、その性質や目的に照らして合理性があれば問題ないという考え方なのです。
正規労働者と同じ仕事をしているのに、非正規の待遇があまりに差別的だとして争われた大阪医科大学・東京メトロ・日本郵政の最高裁判決をみると、一時金と退職金については、別の業務や異動の可能性、仕事や配置転換の範囲に一定の違いがあるとして「格差は不合理とまでいえない」とする判決を出しました。
判決文では、最高裁は仕事の内容や配置転換の範囲に大きな違いはないと考えていたことが伺えますが「(総合的に判断した結果)格差は仕方がない」という判断を示しました。また判決は一般論として、一時金や退職金を支払なければならない場合もあり得るとは述べています。
他方、扶養手当や年末年勤務手当、有給の病気休暇など5つの手当や休暇に関してはいずれも認めました。
全体として、集団的な労働条件の決定を否定し、合理性の名のもとに、労働者をバラバラに分断して待遇(労働条件)を決定していく考え方で、根本的に問題があります。
パート・有期法は、建前と本音がきわめて乖離した法律であり、「同一労働同一賃金」の名のもとに労働条件の個別化を推進し、労働者の分断と格差を拡大させるものと言わざるを得ません。
とはいえ、説明義務規定なども駆使して、賃金・教育訓練・福利厚生・休憩・休日・休暇・安全衛生・災害補償・解雇など、あらゆる領域で非正規労働者の待遇改善に向かって闘うことが必要です。
ちば合同労組ニュース 第128号 2021年3月1日発行より