実践的に考える職場と労働法 団体行動権(争議権・組合活動権)

制度・政策

実践的に考える職場と労働法

 

団体行動権(争議権・組合活動権)

 

正当な争議行為の刑事免責・民事免責を規定

 

 今回から「団体行動」について考えます。団体行動権は憲法28条(団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利)に規定されています。通常、団体行動権は「争議権」として理解されることが多いですが、日常的な組合活動も含まれます。
 ストライキやピケッティング、 ボイコットなどの争議行為は、集団的な労働義務違反であり、使用者の業務を故意に集団的に阻害するものであり、当初は、刑事責任を問われ、あるいは契約違反ないし不法行為として損害賠償責任が追及されました。
 しかし、労働者側の大きな犠牲と長い闘いの中で、こうした争議行為について刑事・民事責任を免責する団体行動権が確立されたのです。英米やドイツなどの労働組合法は、団体交渉の奨励を基本的政策とし、ストやピケは団体交渉制度を機能させるために必要な手段として想定されています。
 日本の憲法28条は、争議行為以外の労働組合活動も保護の対象に加え、規定としては他の国の諸制度よりも手厚い保護といえます。

 

刑事免責

 

 争議権はまず第一に、正当な争議行為は刑法上の違法性を否定され刑罰を科されない「刑事免責」です。
 刑法35条は「法令又は正当な業務による行為は、罰しない」と規定しています。この規定により医師の手術やプロボクサーのボクシングは傷害罪などには問われません。
 労働組合法1条2項は「刑法35条の規定は、労働組合の団体交渉その他の行為であって、前項に掲げる目的を達成するためにした正当なものについて適用があるものとする」と書いています。
 つまり、労働組合の正当な行為は、刑法における「正当行為」の一種として犯罪成立要件のひとつである違法性を阻却されるのです。
 ストなどの争議行為は、形式的には強要罪や住居侵入罪などに該当する可能性がありますが、正当な争議行為は免責され保護される重要な意義を持っています。

 

民事免責

 

 労働組合法8条は「使用者は、同盟罷業その他の争議行為であって正当なものによって損害を受けたことの故をもって、労働組合又はその組合員に対し、賠償を請求することができない」として民事免責を規定しています。
 民事免責制度が確立する以前は、ストやボイコット、ピケなどの争議行為は、労働契約上の労働義務違反の行為であり、誠実義務などにも抵触するとして損害賠償責任などが問われました。また使用者の操業や営業権利を侵害する不法行為、あるいは使用者の所有権その他の権利を侵害する行為とされました。
 民事免責は、正当な争議行為については、以上のような債務不履行や不法行為の責任を免責します。
 ただし、スト期間中は労務提供がなされないので使用者は賃金カットは可能です。賃金の全額払いを規定する労働基準法24条にも抵触しません。「ノーワーク・ノーペイの原則」となります。

 

組合活動

 

 団体行動権の保障に組合活動も含まれ、組合活動にも刑事免責・民事免責はもちろん及びます。日常の組合活動に関する民事免責は、労働組合法に必ずしも明確な規定がありませんが、憲法28条による団体行動権の保障が労働組合活動への民事免責を特に除外すると理解できるような根拠はありませんので、実務的にも学説上も争議行為以外の組合活動についても民事免責は肯定されます。
 日常的な組合活動として情宣活動や職場集会などがありますが、団体行動権だけでなく「表現の自由」もあり、職場の労働者に訴えるために、ビラやニュースの配布、演説・シュプレヒコールなどの情宣活動を行うことができます。職場集会も重要な活動です。
 団結権や団体行動権の保障のために組合活動として一定の施設利用は必要不可欠であることは自明です。企業がそれを受忍するのは当然であり、あるいは形式的に企業の施設管理権などを侵害するとしても、その違法性は免責されるべきです。
 しかし、こうした情宣活動や職場集会をめぐっては、懲戒処分などの不当・不利益な取り扱いの対象となることも多く、労働委員会や裁判でも争いになります。組合側の主張通り正当性が認められる場合もありますし、否定されるケースもあります。文字通りせめぎ合いです。
 裁判所は、こうした問題の正当性の判断について「情宣活動の内容のみならず、 当該情宣活動がなされるに至った経緯・目的・態様・当該情宣活動により生じた影響など諸般の事情が 総合的に考慮されたうえでなされなければならない」として、いわば総合判断説の立場のようです。

ちば合同労組ニュース 第132号 2021年7月1日発行より