実践的に考える職場と労働法
妊娠・出産・育児をめぐる法律・制度
時間外労働・休日労働・深夜業を制限
今回は、女性労働者の妊娠・出産・育児について法律や制度をまとめてみます。91年の育児休業法の制定以降、ずいぶん法律・制度も変わり、この数年は毎年のように改定されています。近年の人口減と労働力不足に対応して女性労働者を動員したい政府・企業の意図と、長年の女性労働者の闘いの成果があいまって、労働者にとって「改善」されている領域でもあります。
今回、勉強して、労働組合員として一通りは知っておいた方が良いと思いました。まずは基礎知識を活用して最低限の労働条件を確保し、職場闘争に役立てたいと思います。
妊娠中の職場生活
☆時間外・深夜の制限
労働基準法第66条は、妊産婦(妊娠中の女性、産後1年を経過しない女性)に関して労働時間などについて特別の保護を定めており、妊婦は、時間外労働・休日労働・深夜業の免除を請求できます。また変形労働時間制の適用を外すこともできます。また保健指導や健康診査を受けるために必要な時間の確保も使用者には義務づけられています。
☆軽易業務転換
使用者は、妊娠中の女性が請求した場合においては、他の軽易な業務へに転換させなければなりません。軽易業務の種類については特に規定はなく、原則として女性が請求した業務に転換させる趣旨とされます。労働時間帯の変更も含まれます。
☆危険有害業務の就業制限
重量物を取り扱う業務、有毒ガスを発散する場所における業務その他妊娠・出産・哺育などに有害な業務への妊産婦の就労は禁止されています。この規定は、省令によって妊産婦以外のすべての女性労働者に準用されています。
産前・産後休業
産前休業は、出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から請求すれば取得できます。産後休業は、出産の翌日から8週間は、就労することができません。ただし、産後6週間を経過後に、本人が請求し、意思が認めた場合は就業できます。
産前・産後休業の期間とその後30日間の解雇は禁止されています。
☆出産手当金
休業中は事業所に有給の定めがないかぎり無給ですが、健康保険によって、産前42日、産後56日までの間、休業期間1日につき賃金の3分の2相当額が支給されます。また14年4月1日から産前・産後休業中の社会保険料は免除となりました。
産後休業の後
☆育児休業
1歳に満たない子を養育する労働者は、男女を問わず最大1年6か月(保育所に入れないなどの理由で延長した場合)、子どもを養育するために休業できます。休業中は定めがなければ無給ですが、雇用保険制度により育児休業給付金が支給されます。労働・社会保険料も免除となります。
☆育児時間その他
使用者は1歳未満の子を育てる女性は、1日2回各々少なくとも30分間の育児時間を与えなければなりません。勤務時間の始めか終わりでもよいとされ、1日1回60分でも可能です。
時間外労働・休日労働・深夜業の制限、変形労働時間制の適用制限、危険有害業務の就業制限は、妊婦と同じです。
☆短時間勤務制度など
育児介護休業法は、3歳未満の子を養育する男女労働者について、短時間勤務制度(1日原則として6時間)を設けること、所定時間外労働の免除を制度化すること、始業時刻変更等の措置が使用者に義務づけています。
3歳から小学校就学までについては努力義務とされています。
このほか、小学校入学前の子を養育する一定の労働者から請求からあった場合は、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはならないことになっています。深夜労働も制限されます。
☆子の看護休暇
小学校入学前の子を養育する労働者は、会社に申し出ることにより、年次有給休暇とは別に1年につき子が1人なら5日まで、子が2人以上なら10日まで、病気やけがをした子の看護、予防接種及び健康診断のために休暇を取得できます。
ちば合同労組ニュース 第79号 2017年2月1日発行より