ちょっと今から仕事やめてくる

労働映画

映画紹介『ちょっと今から仕事やめてくる』

 いかにもネット小説を映画化みたいなタイトルで敬遠していたが意外に良かった。労働組合のニュースに掲載するにはやや複雑な心境ですが、こういう映画もありなのかも。
 そこそこの大学を卒業し、中堅の印刷会社に就職した主人公の青山隆。だがそこはブラック会社だった。部長から毎日の苛烈なパワハラ。150時間を超えるサービス残業、達成不可能なノルマ、無意味な朝礼や社訓。「遅刻は10分千円の罰金」「有休は身体がなまる」と毎日唱和。青山は疲れ果てて駅のホームで無意識に電車に……だが衝突の直前、小学校時代の同級生ヤマモトと名乗る男が彼の腕を引く。
 ヤマモトは、関西弁で爽やかな笑顔の謎の男。彼と出会い青山は次第に明るさを取り戻す。そんなある日、青山はヤマモトが3年前に自殺していたことを知る。あの男は一体何者なのか? やがてヤマモトのウソもばれるが〝おせっかいな関西人〟との友情も深まり、青山は仕事も順調に。ところがまさかの大失敗でまた元の状態に。パワハラ部長が「悪いと思ってるなら土下座ぐらいするもんだろ」と書類で頭をバンバン叩く場面は真に迫る演技。
 いくつか場面転換があり〝今から会社やめてくる〟の終盤に向かう。懲戒免職の脅しに青山は「それでもいい。3日前までは屋上から飛び降りようと思っていた」「部長もできれば休んで下さい」。実は、営業部で成績トップ、憧れの五十嵐先輩が成績ダウンの恐怖に追い詰められ、青山の発注書を書き換えて仕事を奪ったことが明らかになる。
 なぜヤマモトは青山を助けたのか真実が明かされるラスト。青山役の工藤阿須加はピッタリ。プロ野球の工藤投手の息子です。

ちば合同労組ニュース 第91号 2018年02月1日発行より