連載・介護労働の現場から〈働き方編5〉
機械とパソコン
機械化で腰痛を防ぐ
90年代に先進国では、健康被害を理由とした労働者の要求で介護の機械化が行われた。導入にさほど労使の対立はなかった。日本では、労働基準法でモノの取り扱いには重量制限があるが、対人労働はその重量制限から外されているため、介護職は腰痛などの健康被害が慢性化している。
ところが現場の労働者にはリフトなどの介護機器は評判が悪い。「介護はこころ」より大きな理由が「装着に時間がかかるから」。
抱きかかえて「せ~の!」で一発に移乗すれば利用者一人当たり2秒ですむが、リフトを使っていたら二人で2~3分かかる。それでは時間内に業務がこなせないというわけだ。
時間内に業務がこなせなければ人を増やせばすむハナシではないか。労働者の健康のほうが大事だ。腰にコルセットをし、整骨院に通い、重症になると一生台なしになってしまう。なのにどうして機械化に抵抗するのか? なんでもかんでも人の手でやるのではなく、機械や道具の手を借りて、腰痛のない職場にしよう。
ICT化に備える
機械化と同じく、介護現場で進んでいないのがICT(情報通信技術)化である。
介護保険の役所への請求は原則インターネット経由なのでパソコンのない事業所はまずない。しかし、介護の現場では、記録は手書き、引継ぎや連絡も口頭かノートのアナログが支配している。
介護は介護保険上、利用者に何かケアをするたびに書類の作成が必要だ。公的文書なので手書きの間違いは横線で消し、書き直して修正印を押す。記録はかなりの量で、そのためにサービス残業したり、肝心の介護はほったらかしになる。それでもパソコンに慣れない介護労働者は苦手意識が強く業務に手一杯で、パソコンなんて触ってられないと反対が強い。
経営者がICT化しないのは、PC本体にソフトやアプリ、無線LANなどの設備投資が必要だからである。
デジタルの世の中で介護分野のICT化はさけられない。労働者がパソコン苦手なんて理由で抵抗していると足をすくわれる。どれだけ人員不足であっても人への投資をしない(できない)経営側は、ICT化投資を理由にさらに人員を減らすだろう。
ちっぽけなプライド捨てる
機械化もICT化も人員不足と密接な関係がある。労働者が国や経営者が決めたシステムを絶対視し、ちっぽけなプライドで後ろ向きに抵抗するのは国や経営者の思うつぼ。使い捨てられるだけ。
パソコンやるよ、機械化結構。でもその金でまず人を増やせ。機械やパソコンを操作するのは労働者だから、人増やさなきゃ、みんなでストライキやるよ…それくらいの大きなプライド持ちたいね。(あらかん)
ちば合同労組ニュース 第77号(2016年12月1日発行)より