連載・介護労働の現場から〈最新スペシャルレポート3〉

人手不足下の職員

モノ扱い

 国の配置基準の60%しか人がいない超人手不足、ワンフロアに30人ほどの入居者がいるが、そのフロアの職員配置は、多くて1人、ゼロの日もよくある。入居者の緊急コールは、他の階の職員のPHS電話に受信するようになっているが、手が離せないことがほとんどなので無視する。その結果、事故が多い。
 入居者がベッドから転落してもいいように介護ベッドを一番低位置まで下げ、床にマットレスを敷く。この対象者が異常に多い。そして、マットレス転落は日常茶飯事。落ちた入居者はパニック状態だが、職員が少ないので、発見も遅く、マットレスからはい出し、さらに事故を起こすこともある。
 転落を発見し、看護師を呼ぶ。看護師が来るまでに10分近く、そしてドアの外からちらっと見て「大丈夫よ」。看護師の代わりにバイタルチェックをし、外傷チェックを済ませ、事故報告書を書いて提出したら、先輩に「マットレスの上に落ちたのは事故じゃないから、書かなくていいよ」。どうりで事故報告書件数が異常に少ない。
 過去に、ベッドから床に直接落ちて救急搬送された事故報告書の原因欄には「多動」の文字。寝返りができる人が、動くのは当たり前。それを「多動」とは言わない。むしろ、寝たきりにならないように起きて動いてもらうのが自立支援で、それが介護職の仕事なのだ。「多動」の入居者は、事故から2週間で亡くなった。
 職員は、身体を動かすことだけでなく、コールやおしゃべり、要求や表現も問題行動と捉える。「じっとして」「これをしてはダメ」「何度も言ってるでしょ」「がまんできないの!」の行動制限は、収容所並み。

カポ

 以前に他の施設での介護経験がある職員は、すぐにやめていく。 「こわくてやってられない」
 当然だ。この職場で仕事に慣れるということは、モノ扱いになれるということだ。施設長やリーダーは、そもそも人権感覚があるのかと思うくらい、介護への理解がない。
 でも人間が人間をモノ扱いして平気でいられるものだろうか? 一番長い職員で2年。それでもいつも辞めたいと思っているという。いつも疲れ切って、ストレスからイライラし、虐待まがいの言動がでるのを自覚していた。だからたまに、罪滅ぼしでていねいな介護をするのだそうだ。ナチスドイツの収容所看守、カポは、同郷やお気に入りの収容者にやさしくすることもあったという。
 同期で入った未経験の職員が辞めた。教育、知識、スキルがなくても、恐ろしい職場だ。
 業務過多。ストレス、周りの雰囲気…。そんな中にあっても、虐待を踏みとどまれる何か。そのようなことをいつも漠然と考えていた。(つづく)

ちば合同労組ニュース 第90号 2018年01月1日発行より