おみおくりの作法

労働映画

映画紹介『おみおくりの作法』

  良質のお仕事映画を発見した。新聞記事の「孤独死した人物の葬儀を行う仕事」から着想を得たという英国映画。
 ロンドン市ケニントン地区の民生係として働くジョンは44歳の独身男。孤独死が見つかると役所のジョンのところに連絡が入る。彼は遺体搬送後の住居から故人の親戚や知人の情報を探し、訃報を知らせ、遺品を引き渡す。身寄りが見つからない場合は葬儀の手配も。会葬者が彼1人の時もある。
 几帳面なジョンは1人ひとりを誠実に「おみおくり」。口数は少なく、親しい友人もなく、仕事を終えると狭いアパートへ直行。ジョンもまた孤独な生活だ。ある日、役所の統廃合でジョンに解雇予告が。上司はジョンのやり方では経費がかかりすぎると告げる。「合理化はできる。弔う者がいない葬儀になんの意味がある? 所詮、死者の想いなんてない」
 ジョン宅の向かいのアパートの住民ビリーの案件が最後の仕事に。目と鼻の先での孤独死に少なからずショックを受ける。ビリーを知る人を求めて英国中を旅することに。
 とにかくディテールにこだわる映画で、注意しないと見落としてしまう。少しだけ紹介すると、かつてビリーが働いた食品工場を訪問。ビリーは会社と組合にかけあい休憩を5分延長させ、翌日、材料に小便をして辞めたのだ。同僚は「この工場で一番美味いのはミートパイだ。ビリーが材料に小便してから格段に美味くなった」と、お土産にパイを手渡す。帰りの列車で恐る恐るパイをかじるジョンの姿が滑稽だ。
 ジョン役の俳優は素晴らしい。表情で語る独特の緊張感と雰囲気でストーリーが進む。最後はなんとなく予感もあったのだが、別の終わり方にして欲しかった。

ちば合同労組ニュース 第104号 2019年03月1日発行より