マルクス・エンゲルス

労働映画

映画紹介『マルクス・エンゲルス』

 『共産党宣言』誕生までの若きマルクスとエンゲルスの出会いと闘いを描く。
 冒頭、森林で薪拾いする農夫を窃盗として官吏が襲撃するシーンから始まる。日本昔話でもお馴染みだが、元来、森林の枯木を生活の糧とすることは住民の習慣的権利だった。当時、製鉄に木材が使われており森林所有者は政府に働きかけて木材窃盗取締法を制定し、過酷な取り締りを行ったのだ。
 ライン新聞の編集長だったマルクスは「落ちた枝は誰のものか。かつて森の恵みは民のものだった。民は窃盗という行為を続けるしかない」と厳しく告発。新聞社は官憲に包囲され、当局の怒りを恐れる青年ヘーゲル派と決裂したところで全員が逮捕されて新聞は発禁に。マルクスはパリに向かう。
 他方、資本家の息子であることに葛藤するエンゲルス、後に妻となるメアリーとの出会い。映画的には魅力的な描写だ。
 エンゲルス工場で女性工員が居眠りで機械で指を切断する事故が起き、三日三晩寝ていない状況の改善を要求したのがメアリー。その場で解雇され工場を去るメアリーを追うエンゲルス。貧民街の酒場では「おぼっちゃんの来る所じゃないよ」とぶん殴られて気絶…名著『英国における労働者階級の状態』のエピソードが語られます。
 「所有とは何か」を問うマルクス、資本家と労働者に精通するエンゲルス。2人の出会いが決定的だった。「所有とは盗みだ」と主張するプルードンやヴァイトリングとの論争も興味深い。「哲学者たちはこれまで世界を様々に解釈してきただけだ。問題は世界を変革することだ」。そして労働者階級がその変革の主体だ。完成度はともかく映画の現代的意味は大きい。

ちば合同労組ニュース 第101号 2018年12月1日発行より