獄友

労働映画

映画紹介『獄友』

 冤罪青春グラフティ/やっていないのに、殺人犯/人生のほとんどを獄中で過ごした男たち/彼らは言う「不運だったけど、不幸ではない」……

 狭山事件の石川一雄さんの名前は知っていたが、これまで集会に参加する機会もなかった。とある集会でチラシを手にし、石川さんら実在する5人の冤罪被害者が出演しているドキュメンタリー映画というのに惹かれて観に行った。

 「布川事件」の強盗殺人犯として29年間を獄中で過ごし、11年に無罪が確定した杉山卓男さん、「袴田事件」で死刑が確定して48年間獄中で過ごし14年に再審が決定し釈放されるも検察が抗告したため今も死刑囚である袴田巌さん、石川一雄さん(獄中29年)、桜井昌司さん(獄中29年)、管家利和さん(獄中17年)の5人が登場する。

 殺人犯へのデッチあげという筆舌に尽くしがたい体験を持つ彼らは「不運だったけれど、不幸ではない」と語り、互いを「獄友(ごくとも)」と呼ぶ。そして獄中での野球や毎日の食事、仕事を懐かしそうに語り合う。そこには、無実でありながら“殺人犯”の濡れ衣を着せられた者同士にしか分からない何かがある。映画は、なぜ彼らは自白したのか。獄中で何があったのか。塀の外(シャバ)に出てからの5人の人生と友情を追う。

 当たり前だが、何か特別な人たちではない。しかし、「冤罪になって良かった」という彼らの言葉は観た直後には正直に言えば違和感さえ覚えた。だが獄中は、彼らの生活の場であり、学びの場であり、仕事場であった。まさに青春を過ごした場所なのである。5人は無実が証明されることを信じ必死に生きたのだ。(組合員A)

ちば合同労組ニュース 第100号 2018年11月1日発行より