職場にユニオンをつくって労働条件改善

職場にユニオンをつくって労働条件改善を

この間、介護職場での「死亡事故」「暴行・虐待」などが報道されています。人手不足が労働強化を招き、それが離職の拡大につながる悪循環に陥っています。介護職場の労働条件が大幅に改善されない限り、この状況は変化しないと思います。

私たちは、千葉県内の介護職場に労働組合をつくって「一生、安心して働ける労働条件」「十分な要員確保」などを要求していきたいと考えています。
2000年の介護保険制度によって介護事業が営利の対象となり多くの民間企業が介護事業に参入しました。市場原理が最優先となり、各施設は生き残りをかけて利益を追求することになり、職員は減らされ、安全対策が放置されています。賃金も上がらない状況が続いています。
介護労働者はみな利用者の安全と尊厳を守るために必死に働いています。しかし、職場環境の厳しさの中で「自己責任」「自己努力」が強いられています。私たち自身の安全や尊厳も脅かされています。

p0067_01_01a10年後、首都圏の後期高齢者が175万人増加し、介護労働者が大幅に足りなくなることが予想されています。ところが介護労働者の離職率は全産業平均と比較して高く、特に新人の定着率が悪い状況です。

離職の理由は〈まともに生活できる賃金をもらえない〉〈仕事がきつい〉〈これから先に夢が持てない〉などです。若い人が誇りをもって一生働けるような職場をつくるのが私たちの夢です。
これはあらゆる職場の問題だと思います。働いていれば誰もが感じる当たり前の要求を大切にしていきたいと思います。

ちば合同労組ニュース 第67号(2016年2月1日発行)より

連載・介護労働の現場から〈33〉モラルハラスメント

連載・介護労働の現場から 〈33〉

モラルハラスメント

関口さんは、福祉の専門学校出の新卒でこのホームに就職して、12年のベテランである。村松係長より長い。介護スキルもすごく、元コールセンターの同僚が話していたおむつ替え1分、高速食事介助2分を思い出した。
仕事を時間どおりまわすことが介護だと思っているタイプ。入居者とも長年の顏なじみで、現場を取り仕切っていた。ただ、介護居室の入居者には人気がなく、「また、あのオンナが威張り散らしている」とあからさまに言う入居者もいた。

私は、入職して1か月半、パートだし、場面場面で適切な介護をこなすだけで精いっぱい。これまで小さな施設にいたせいか、一人ひとりの入居者に寄り添う介護が身についている。起床介助やトイレ、入浴の介助も、声掛けしながらゆっくりやる。
関口さんはそれが気に喰わない。入居者にトイレでゆっくり座ってもらっていると、のぞきに来て、「いつまでかかってるの」と言う。私のスローペースを叱責しているのだが、入居者は自分の排泄が遅いと思い、脅えて排便をがまんする。

矢継ぎ早やに思いつきで命令する。「(入居者を昼寝から)起こしをやって」
1分もたたないうちに「(違う入居者を)お風呂に連れてきて」、そして、「まだやってないの!」「優先順位を考えて」
介護度が高いため、二人で介助することになっているので頼むと「私にやれっていうの?」「力が足りない。一人でやるのよ」
「~していいですか?」と許可を求めると、「聞かなきゃわからないの?」と答える。
それに対し、私が「じゃ、やります」と言うと、「○○なのに、なぜ~するの?」と言い、反対に「じゃ、やりません」と言うと、「○○なのに、なぜ~しようとしないの」という。後出しじゃんけんの卑怯なやり口だ。
あと聞こえないふりをして無視する、たえず見張る、大きな声で呼ぶ、怒鳴る、追いかけてくる。休憩時間にこれまでのミスを長々と列挙する。公然と侮辱する。染谷さんと一緒に小さないやがらせを毎日執拗に繰り返す。

p0067_03_01a メモってきた冒涜の言葉の数々…。「ホント使えない人だね」「頭が悪いんじゃないの」「言い訳しない」「一から十まで聞くな」「どんな育ち方をしたの」「それでも長年主婦やってきたの」「謙虚さが足りない」
こんなこと言われ続けていたら、被害を受けているのではなく、自分が悪いと思い込む。あげく、これまでの自分の感覚が信じられなくなり、解離症状がおきる。百瀬さんは、慢性的抑うつ状態で不眠が続いていて、夜中にメールが来る。こんなアイデンティティ喪失を起こすようないじめ、名前があることを知った。
「モラルハラスメント」
(あらかん)

ちば合同労組ニュース 第67号(2016年2月1日発行)より

映画紹介『キューポラのある街』

映画紹介『キューポラのある街』

p0067_03_02a 荒川鉄橋を渡る電車の窓から〈キューポラ〉という独特の煙突が並ぶ鋳物の街・埼玉県川口市の全景から映画は始まる。吉永小百合主演の『キューポラのある街』。

かなりステレオタイプなストーリーではある。しかしあの時代の現実や理想、機微まで含めて見事に描いた映画だ。現代を同じように1本の映画で表現するのは難しい。
中学3年の主人公ジュンは鋳物職人の長女。明るく前向きで高校進学を目指す。しかし父が工場を解雇され家計は火の車に。高校の入学費用を貯めようとパチンコ屋でアルバイトも始める。職人気質の父親はようやく再就職するも近代化された工場について行けずに仕事を辞めてしまう……
貧困や親子関係、労働組合や民族、友情など様々なエピソードを99分の映画に収める。物語もよく作り込まれているが、貨物列車の通過など、横長の画面に映り込む町並みや人びとの動きなど細かいところが良い。映画館で観たい。

織り込まれたエピソードもいい。父親が解雇される場面。同じ工場で働く隣家の青年が労働組合で労災や退職金を掛け合う。「職人がアカの世話になるわけにはいかない」と拒否する父親。このやりとりも面白い。職人気質の年配労働者と組合の話をする若者。いまの職場では、こういう対比では物語にならないかも。「ダボハゼの子どもはダボハゼ」「中学出たら働くんだぞ」と怒鳴り散らす父親と主人公姉弟との口論。在日朝鮮人姉弟との友情……

主人公の弟が牛乳泥棒を配達少年に見つかり「病気の母ちゃんの薬が買えない」と抗議され神妙になるシーンなど取り上げたいエピソードはありますが、この辺りで。

ちば合同労組ニュース 第67号(2016年2月1日発行)より

軽井沢バス事故-規制緩和と闘おう

軽井沢バス事故
規制緩和と闘おう 闘いなくして安全なし

p0067_04_01a 15人の命が失われた軽井沢バス事故。事故発生時にハンドルを握っていた65歳の運転士は50歳で大型二種免許を取り、65歳で契約社員として入社したとのことです。
運転手は大型バスの運転経験がなく面接で「大型バスは苦手」と話しましたが、バス会社は、国が定める運転士教育も行わず、わずか研修2回だけで乗務を強い、4回目の乗務で発生した事故でした。
バス会社は、大型バスの運転経験もない高齢のドライバーに健康診断も行わずに過酷な深夜運転をさせていたのです。運転手はどんな気持ちで運転していたのか……

スキーツアーを企画した旅行会社は、国の下限(約26万7千円)を大幅に下回る19万円で発注していました。昨冬は13~14万円だったことも明らかになっています。
〈旅行会社=元請け〉〈バス会社=下請け〉という業界の構図でバス会社のダンピング(不当廉売)が横行し、コスト削減のために実際に働く運転手に過酷な業務が強いられているのです。
高速料金も上限があり、料金節約で帳尻を合わるために運転手は無理をして一般道の峠越えを選んだのではないかと指摘されています。

貸切バスは00年に規制緩和され、00年度の2864社から12年度4536社に増加。高齢化も深刻でバス運転手の平均年齢は48・5歳で6人に1人が60歳以上です。
規制緩和と外注化の構図でダンピングが横行し、労働現場では非正規雇用化や労働強化などにより無理が生じたことは明らかです。
12年の関越道バス事故では7人が死亡しました。この時も「規制緩和」「価格競争」「国土交通省の監督の甘さ」が指摘され、夜間に運転手が1人で乗務できる距離の上限が原則400㌔に短縮され、それを超える場合は2人乗務が義務づけられました。しかし再び多くの犠牲者が出る事態となりました。

安全運行を脅かす企業の存在を可能としている規制緩和政策を覆さなければ事故は減りません。ところが大手バス会社の労働組合も規制緩和に対抗できていないのが現状なのです。
規制緩和で安売り競争が激化し「新規参入してきたバス会社に勝つためは人件費を削減するしかない」という企業の攻撃に対して、ほとんどの労働組合が低賃金の非正規運転手の導入を容認しました。儲からない路線を分社化してより低賃金の下請会社へ委託することに協力しました。
例えば京成バスは90年代半ばから地域ごと路線ごとに分社化され、現在では20社以上に分社化されています。
こうしてバス運転手の全国平均賃金は瞬く間に下がっていきました。

多くの労働組合が分社化や外注化、非正規雇用に協力して「労使協調の労働組合」として組織を維持し、その見返りに組合幹部は下請会社の幹部として天下りしたのです。
事故を防ぎ労働者と利用者の生命を守るために労働組合が闘わなければその存在意義はありません。「規制緩和が原因。政府はもっと規制を」というのは簡単ですが労働組合が闘わなければ職場の状況は変わりません。

ちば合同労組ニュース 第67号(2016年2月1日発行)より

編集後記

【編集後記】
日銀のマイナス金利と聞いて「どういうこと?」と思わない人はいないのではないでしょうか。銀行にお金を預けるのに逆に利子を支払うなんて…。この世の終わり。というか日本の経済システムが完全に破産したということじゃないのか? これから労働者にとってますます厳しい時代になると思いますが、行き着く所まで行けば後は希望が残るのか。労働者は団結して労働組合をつくって、嵐のような時代を闘っていきましょう。(M)

ちば合同労組ニュース 第67号(2016年2月1日発行)より

団結にこそ希望が 変える力は私達の中に

職場を変える力は私達の中に
労働者の団結にこそ希望がある

昨年は、ちば合同労働組合にとって新たな一歩を踏み出した年でした。
モリタ分会・D分会に続いて、新たな職場分会の結成を果したことを、地域の労働組合として地域に根差した団結を拡大していく足掛かりにしたいと考えています。
職場での2回の団体交渉の内容は職場特有のものではなく、どんな職場でもあり得ることでした。どんな職場でも働いていれば誰しも改善したいことや要求があるはずです。どんな職場でも条件があれば労働組合をつくることができるはずです。
まだまだ小さなロウソクの炎です。一吹きで消えてしまうか、それとも燎原の火のごとく燃えひろがるか。

この秋、2人の労働者が職場を去りました。使用者側の攻撃の卑劣さや自尊心を傷付けられたことなど職場を辞めた理由はあると思いますが、結果的には労働者の方から辞める結果になってしまった。
厳しく総括すれば、職場を見限ってより良い職場を探して去ったということです。これまでにも幾人もが管理者と衝突し、直訴して辞めていくのを目撃しました。
n0066_01_01a ここより良い職場はあるだろうし、理想の職場に巡り会う可能性は否定しません。
だけど私はこう思う。
外に青い鳥を求めて彷徨い歩かなくても、いまいるこの場所を本当に良い職場に変えていく力が私たち自身の中にあるんだと。
労働者の団結に希望があることを示す2016年にしたい。皆さん、今年もよろしくお願いします。(A)
ちば合同労組ニュース 第66号(2016年1月1日発行)より

韓国・民主労総がゼネスト 労働改悪にノー

パク政権の労働改悪にノー
韓国・民主労総がゼネスト

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韓国で12月16日、パク政権が進める労働改悪に反対して民主労総(組合員80万人)がゼネストを決行。現代自動車、起亜自動車、韓国GMなどの金属労組がストに入り大きな力を示しました。
韓国の国会近くで開かれたゼネスト集会では「失業と非正規職を転々とし、解雇と派遣職をさまよう国、このままでは希望はない」「やさしい解雇、一生非正規職の労働改悪を粉砕しよう!」などの訴えが行われました。

ちば合同労組ニュース 第66号(2016年1月1日発行)より

連載・介護労働の現場から〈32〉真打ち登場

連載・介護労働の現場から 〈32〉

いじめの真打ち登場

百瀬さんの顏は蒼白で、その側で二ヤけてる染谷さん。マンガの世界だ。三田村さんと私で百瀬さんを支え、休憩室に連れて行った。
上司を呼ぶべきだと思った。課長は不在だ。村松係長を呼んだ。ちらっと見て「もう、早退したら」と言っただけだった。
三田村さんに「三人で早退しようよ」と提案し、ナースステーションにいた看護師にその旨を伝え、三人で施設を出て、ホテルのカフェに行った。
百瀬さんは少し経つと、生気を取り戻し、堰を切ったようにしゃべり続けた。早退したのが3時で、職場の退社時間の5時を過ぎ、8時くらいまでホテルにいた。
パワハラ? 同じパートの身分だからパワハラではないか。それにしても、職場の壮絶ないじめは、この年になって初めての体験だ。力石どころではない。女のいじめというのはこんなものなのか。
私は次の日、私のプリセプター(新人教育係)と課長に言って、百瀬さんと染谷さんとが一緒にならないようにシフト変更してくれと要求した。
課長は、リーダーシップがあるタイプではないが、百瀬さんのシフトを一部変えてくれた。プリセプターの丸山くんは、前の施設の管理者と同じ体育系大学卒、新卒入社で3年間の現場研修中。2週間に一度、プリセプターとの面談があって、悩みや課題、目標などを話し合う。
「現場の新人教育、おかしいと思わない?」と私が言うと、丸山くんは「僕もそうでした。わけのわからないことでいじわるされるんですよね。介護の世界というのは特殊なんですよね」。
ふん、あんたは3年限りの医療福祉コングロマリットの幹部候補生の身。パートの新人と形式的なプリセプターごっこやってればいいけど、百瀬さんは生活がかかった母子家庭。
n0066_03_01a 「特殊じゃないでしょ。普遍的な人権侵害。上のどこかに報告して、どうにかしてよ」
わからないだろうな、体育会系。
「どうやってするんですか? いじめの細々したことをどうやって? イヤですよ」
やっぱり、役立たず。
百瀬さんは、それでもがんばって仕事を続けた。染谷さん以外のパートは現場でできるだけ百瀬さんをサポートした。でも、1か月を過ぎたころ、突然休むことが多くなった。「起きられない。バスに乗っても途中下車してしまう」とメールがきた。
百瀬さんの代わりに私が染谷さんと同じシフトになることが多かったが、無理難題は丸山くんや課長に助けを求めたりして、どうにかかわした。
しかし、染谷さんには社員の古株、関口さんという仲間がいたのだ。私に対するいじめの加害者は関口さんに移行し、染谷さんはその尻馬に乗るだけ。この構図もアホくさい。(あらかん)
ちば合同労組ニュース 第66号(2016年1月1日発行)より

映画紹介『パレードへようこそ』

映画紹介『パレードへようこそ』

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実話に基づく英国映画。1984年、サッチャー政権の炭坑閉鎖に反対し1年に及ぶストライキ。労働者が団結して立ち上がる姿をテレビで知ったゲイのマーク。マイノリティである自分たちと同じだと仲間を集めてLGSM(炭鉱夫を支援するレズ&ゲイの会)を設立し、募金運動を始めます。
しかし炭鉱労組はレズ&ゲイと聞いただけで拒否反応。そんな中、ウェールズの小さな炭坑町オンルウィンに直接カンパを持っていくにことに。苦境の中、助け合って闘いを継続する人びと。いきなりやってきた都会(ロンドン)のゲイ&レズビアンにとまどい、冷たい反応。しかしLGSMは拒否されても諦めない。次第に心を通わせ、絆を深めていく……
炭鉱ストを題材にした映画を探していて見つけた映画です。最初、炭坑とゲイの組み合わせは、奇をてらった感じなのかなと思ったのですが、最初の数分で連帯と団結の素晴らしさを予感させる展開に。
「社会なんてものはない。個人としての男がいて、個人としての女がいて、家族がある。ただそれだけだ」。これはサッチャーの新自由主義を象徴する有名な言葉だ。サッチャー時代の英国は、あらゆる社会的な連帯や紐帯を断ち切り、すべてを自己責任と自己努力に叩き込んだ。ここを打ち破らなければ私たちの生きる現代世界は変わらない。
この映画は、人びとの感情や葛藤を込めながらも説教じみず明るく描いている。大切なのは仲間と手をつなぐこと! 連帯と団結!
ちば合同労組ニュース 第66号(2016年1月1日発行)より

労働法大改悪をどう見るか?闘う素晴らしさ復権で

安倍政権の労働大改悪をどう見るか?
団結して闘う素晴らしさ復権させたい

n0066_04_01a 安倍政権は16年通常国会で「残業代ゼロ法」「解雇の金銭解決制度」を狙っています。
15年9月には改悪派遣法が成立・施行されました。
これまで派遣労働は、原則として臨時的・一時的業務に限定され、正社員から派遣への置き換えができないよう受け入れ期間は原則1年、最大3年となっていました。
今回、この原則が取っ払われました。1985年の法制定以来の抜本的改悪であり派遣の全面解禁です。派遣先企業は3年で人を入れ替えれば永久に派遣を使い続けることが可能となり、派遣労働者は3年ごとに解雇される。
これは間違いなく社会の様相を一変させます。3年後に何が起きるのか?
隣の韓国では07年に「非正規雇用者保護法」が制定されました。2年を超えて労働者を雇用した場合、無期契約とみなし、2年を超えて派遣労働者を使用した場合は、直接雇用を義務付けました。それとしては画期的な法律です。
しかし2年以内の「雇止め」には制限がまったくありませんでした。こうして韓国社会では施行から丸2年を前にして適用逃れのための大量解雇が発生したのです。
先月号の組合ニュースで紹介した韓国映画『明日へ』はこの時の解雇と闘いが題材です。韓国の巨大流通グループ(イーランド)経営陣は、法律施行2年を前にして、適用を逃れるため非正規労働者を大量解雇(約500人)し、業務外注化を強行しました。
韓国で非正規(派遣)労働者の大量解雇の嵐が吹き荒れたのです。

転換点の95年

日本では1995年に財界(日経連)が「新時代の『日本的経営』――挑戦すべき方向とその具体策」を発表しました。この報告で日経連は「雇用ポートフォリオ(組み合わせ)」という考え方を提示し、終身雇用と年功賃金制度を否定し、労働者の本格的な選別方針を打ち出したのです。
報告は、労働者を①長期蓄積能力活用型、②高度専門能力活用型、③雇用柔軟型の3つに分け、経営のコストパフォーマンスに配慮して、これらの雇用形態を組み合わせた人事戦略を展開することを雇用の基本戦略として示したのです。
従来型の雇用形態は①のみ。その対象は全労働者の1割だけ、残り9割は非正規化・外注化して、必要に応じてその都度、導入するというもの。
これがその後の派遣・非正規拡大の転換点となったことは明白です。派遣の規制緩和が一挙に進行し、日本全国のオフィスや工場で契約社員や派遣などの複雑な雇用形態が入り乱れ、外注化や分社化で違う会社の労働者が一緒に働くようになりました。
また年金支給年齢の繰り上げとセットで定年延長や再雇用が制度化され、50歳代の大幅賃下げや非正規化も当たり前のようになりました。
こうして製造現場だけでなく自治体や郵便局、NTT……あらゆる職場で非正規や外注化が普通になりました。
今回の安倍政権の労働法の大転換は派遣の全面解禁にとどまりません。2000年代の小泉政権「聖域なき構造改革」を大きく超える事態が目の前に迫っているのです。

争議の個別化

残業代ゼロ法は、労働基準法における労働時間規制の適用除外です。
8時間労働制は、労働者の健康を保障するために、休日を除き、労働者に1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させることを禁じる制度です。産業革命以来、世界中の労働者が血を流して闘い取った権利です。これを適用除外にするのです。
解雇の金銭解決制度は、裁判で「解雇は無効」の判決が出ても金銭を払えば復職させなくてもよく「解雇自由」と指摘されます。それはその通りであると同時に労働運動の心臓を打ち破るような致命傷を与える攻撃として、私は強い危機感を持っています。
この間、ADR(裁判外紛争解決手続き)や労働審判制度など、労働事件を個別化させる「紛争解決システム」が制度化されてきました。金銭解決制度は、この個別化された労働争議をさらに金銭化していくものではないのか。
ひとことで言えば新自由主義です。労働者を個々の経済主体としてバラバラにして、企業と労働者を(制度で調整して)対等な経済・法律主体であるかのように扱って、最終的に金銭でのみ評価して争議を取り扱う考え方です。
現実問題として労働者の団結が破壊され、こうした個別紛争システムを必要とする労働者がいるのも事実ですが、俯瞰的・全体的にとらえれば、労働組合のもとで労働者が団結して闘う、職場にこだわって闘うことの全面的な否定・破壊を意図した攻撃です。
安保・戦争、雇用・労働、医療・福祉……社会全般で大変な状況が迫っています。こうした状況と切り結び労働者が団結して闘うことに展望があることを示すのが労働組合の任務です。2016年、大いに闘おう!(S)
ちば合同労組ニュース 第66号(2016年1月1日発行)より

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