会社が労働者代表を勝手に選出、不正が広がっています

制度・政策

実践的に考える職場と労働法

過半数代表者の選出要件を厳格化

労働基準法の施行規則に新規定 〝使用者の意向で選出された者ではないこと〟

 左の新聞記事にある通り、会社が労働者代表を勝手に選出する不正や「名ばかり労働者代表」が広がっています。
 なぜこんな問題が起きているのか。安倍首相が「70年ぶりの労働基準法の大改革」と言う「働き方改革」が関係しています。残業代ゼロ制度(高プロ制度)や裁量労働制などの多くが過半数代表者の同意が必要なのです。
 就業規則の改悪による労働条件の不利益変更についても過半数代表者の意見書が必要です。逆に言えば、過半数代表者が反対した場合は簡単には不利益変更ができません。このため会社指名や親睦会代表による「名ばかり労働者代表」が拡大しているのです。

労基法の適用除外

 過半数代表者が出てくるのはどういう場面か? 典型的には36協定の締結です。本来、労働基準法で法定労働時間は8時間です。この規制を適用除外にして残業をさせるためには36協定が必要となります。つまり、その職場の過半数を代表する者が同意した場合には、残業をさせても労働基準法違反に問われないのです。
 労働基準法に規定されている〝労使協定〟は、労働基準法違反の免罪符であり、その免罪符に効力を与えるのは過半数代表者の同意なのです。

不利益変更の法理

 また労働契約の不利益変更については、原則として使用者は、労働者の意思に反して一方的に労働条件を変えることはできません。しかし、07年に施行された労働契約法10条によって〈就業規則の変更に合理性があり、就業規則が周知されている場合には、その変更後の労働条件は有効〉とされるようになりました。
 就業規則の変更による不利益変更が多用されるようになり、労働基準法は、就業規則の変更の手続きとして過半数代表者の意見書の添付を必要としているのです。
 こうして、労働基準法の適用除外や労働条件の不利益変更が大幅に拡大される中で過半数代表者の存在がクローズアップされているのです。

選出要件の新規定

 以上のような事情もあって過半数代表者を選出するに当たり会社が指名するなどの不適正な取扱いが「名ばかり過半数代表者」としてマスコミや裁判などで問題視されるようになり、これはマズイと厚生労働省は過半数代表者の選出要件について少し厳格化しました(19年4月1日~)。
 従来、過半数代表者の選任については労働基準法施行規則の第6条の2に定められ、従来は、以下の2つの要件を満たす者でなければならないとされていました。
①労働基準法第41条第2号に規定する監督又は管理の地位にある者でないこと
②労働基準法に規定する協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること
 これに加えて4月1日から②に「使用者の意向に基づき選出されたものではないこと」という要件が追加されました。

使用者の指名2割

 労働政策研究・研修機構の調査(6458事業所からの返答/17年実施)によれば、過半数労働組合がある事業所は8・3%にとどまり、過半数代表者の選出を行っている事業所の割合は51・4%、選出自体を行っていないが36%でした。
 過半数代表者の「職位」は、「一般従業員49・4%」「係長・主任・職長・班長33・5%」と合計8割近くですが、他方で管理監督者に該当する「課長5・9%」「部長2・9%」「工業長や支店長など4・6%」となっており1割を超えています。
 また過半数代表者の選出については、一般従業員だけでなく、管理監督者やパート、アルバイト等も含めたすべての労働者の意向を反映させることができる民主的な手続きが必要です。
 実際の手続きは、同調査によれば、「投票や挙手30・9%」「信任22%」「話し合い17・9%」となっています。しかし「使用者の指名21・4%」、さらには「親睦会の代表者等が自動的になる6・2%」とけっこうあります。
 信任についても「使用者が決める54%」で過半数を占めています。
 結論です。会社指名、親睦会の代表は不適正です。これは4月1日から労基法施行規則に明記されました。
 厳密には「(過半数代表者は)使用者の意向に基づき選出されたものではないこと(施行規則第6条の2)」という規定が新設されました。
 これだけはしっかり覚えておいて下さい。

ちば合同労組ニュース 第109号 2019年08月1日発行より