労災認定、事業主の不服申し立て制度の新設の動き
労災に関する2021年度のデータ公表があり、年末は労災に関する報道が多かった。アスベストの労災認定は1011人。発症までの潜伏期間が長く、今も毎年1千人前後が労災認定されている。
精神障害による労災の請求件数も増加傾向で21年度は2346件。またトラック運転手の過労死労災は全産業でもっとも多いことが、残業時間が規制される「2024年問題」と合わせて報じられた。
そんな中、労災保険制度の重大な転換が問題になっている。国が労災と認定して保険金の支払いを決めた場合、企業(事業主)にはその取り消しを求める権利は認められこなかったが、事業主が不服を申し立てる制度の新設を決めた(厚生労働省の「労働保険徴収法第12条第3項の適用事業主の不服の取扱いに関する検討会」)。
歩調をあわせて東京高裁では、精神疾患を発症した職員への労災保険の保険金支給を取り消すよう求めた裁判で法人側の主張を認めた。高裁は、労災が起きると事業主が支払う保険料が上がる「メリット制」を重視、事業主は不利益を受けるため支給取り消しを求める資格があるとしたのだ。
労災保険制度は、職場でのケガや病気をした労働者に治療費や賃金を補填する制度で、労働基準監督署が支給を決定する。だが労災の発生率で保険料(事業主が全額負担)が上がるため、保険料の高い建設業界などで「労災隠し」が横行する。労災請求に嫌悪感を示し、妨害する企業は結構多い。この問題、労災保険制度の根幹に関わる重大な攻撃だ。強く抗議したい。
ちば合同労組ニュース 第150号 2023年01月1日発行より