都労委がウーバー社に団交命令

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実態からウーバー配達員の「労働者性」認定

都労委がウーバー社に団交命令

 東京都労働委員会が11月25日、ウーバーイーツ配達員が労働組合を作って団体交渉を求める権利があるとする決定を出しました。ウーバーイーツユニオンは運営会社に対し配達中に事故があった場合の補償や報酬の決め方の透明性などについて団体交渉を要求していました。しかし会社が拒否していたため、一昨年3月に都労委に救済を求めていたのです。
 会社側は、配達員は個人事業主で、働く時間や場所を選んだり、仕事の依頼を拒否できると主張し、労働組合法上の「労働者」に該当しない、つまり配達員は労働組合を作ることができる労働者ではないと主張していました。
 今回の東京都労働委員会の決定は会社側の主張を退け、ウーバー配達員のような就労形態でも労働組合を作ることができる労働者であると認定したわけで非常に大きな影響があることは間違いありません。

団体交渉権

 労働組合法で「労働組合」と認められる団体は、労働者が主体となって組織されるものでなければなりません。労組法で「労働者」は〈職業の種類を問わず、賃金・給料その他これに準ずる収入によって生活する者〉と定義されています(3条)。労働組合による団体交渉を助成・保護すべき者はいかなる者なのかとの観点からの定義です。
 これは労働基準法や労働契約法の定義よりも広い概念です。請負や委任、その他の契約形態による労務提供関係に類似した労働関係によって賃金・給料に準ずる報酬を得る者も団体交渉を求める権利があるということです。これには失業者も含まれます。
 個人事業主の形態では、交響楽団など職業音楽家の労働組合やプロ野球選手会の労働者性が問題になってきましたが、いれずも労働者性、団体交渉の権利が認定されています。住宅設備機器や音響機器の修理補修の業務を委託された技術者・個人代理店の労働者も労働者性を認められています(INAXメンテナンス事件・ビクター事件)。
 今回の類似例として自転車による配送業務従事者(ソクハイ事件)でも労働者性は肯定されています。

労働者性の基準

 労働組合法上の「労働者」は以下の5点で判断されます。
 まず(1)発注企業の業務遂行に不可欠な労働力として会社組織に組み込まれ、(2)契約内容や業務遂行方法を一方的・定型的に決定され、(3)報酬の計算・決定の仕方等において労務対価性ないし対価類似性が肯定されるか――の3点を中心的判断要素とします。
 さらに(4)個々の業務内容を断るのが事実上困難であるか、(5)業務遂行の日時・場所・方法につき会社の拘束を受け、その指揮監督下に置かれているか――を補助的判断要素とします。
 これらは長年にわたる労働委員会での攻防で形成されたものです。
 やや感覚的に言えば、労働組合法の予定する団体交渉による労働条件の集団的決定システムが必要・適切な労働関係かどうかで決まるのです。
 都労委においてユニオン側は、いかに配達員がウーバーの事業に組み込まれているか、その関係がいかに一方的かを主張してきました。
 その典型がアカウント(配達員登録)停止です。配達員が転倒事故を起こして負傷した時に、ウーバーはアカウントの一時停止を行い、永久停止の警告を行っています。また別の配達員に対してはマスクで口・鼻を被っていなかったとしてアカウント停止の警告を行っています。ウーバー社はこういう形で配達員をコントロールしているのです。
 また配達員が、配達リクエストを拒否すると次のリクエストが減ったり条件が悪くなる。いわば干されるのです。
 東京都労働委員会の命令では、配達員が飲食物を注文者に配達する割合が注文全体の99%を占めることや、配達員の評価制度やアカウント停止措置などにより、配達員たちの行動を調整していること、インセンティブ(報酬)を設けて専属的な配達員を確保していることから、配達員が事業組織に組み入れられていると判断しました。
 他にも、契約内容について会社が一方的・提携的に決定していることや、配送料は労務の提供に対する対価であることなど複数の基準を総合的に判断して、労組法上の労働者であると認定しました。

 今回の決定はまだ東京都労働委員会なので、今後、中央労働委員会の再審査や裁判まで行く可能性が高い。最高裁まで行けばかなり時間がかかる。ウーバーイーツは直ちに団交に応じるべきだ。

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 ちば合同労組ニュース 第149号 2022年12月1日発行より