各地で進む公立病院の統廃合
富山国保病院移管方針は白紙に
病院全体の赤字化が加速している。全国8156施設の約7割が赤字で、病院全体平均の22年度の損益率は1・2%の黒字だが、コロナ補助金を除くとマイナス6・7%に。23年度はマイナス10・2%の赤字が予想されている。コロナ補助金がなければほとんどの病院は赤字、特に公立病院の経営環境は厳しい。
厚生労働省は19年9月に、市町村などが運営する公立病院と日本赤十字社などが運営する公的病院の25%超にあたる全国424の病院について「再編統合について特に議論が必要」として病院名を公表し、20年9月までに対応策を求めた。だが直後に新型コロナが世界中で拡大し、公立・公的病院は、基幹的な医療機関として感染者の受け入れで中心的な役割を果たした。
しかし東京都立病院は小池知事が19年12月に独立行政法人化の方針を表明し、22年7月に移管された。都立病院はコロナ医療の最前線に位置し、多くの都民が入院できずに命を失う状況下での独立行政法人化の強行に「将来的な廃止や民営化などにも道を開く」との強い批判が出た。
住民の声で撤回
千葉県では、南房総市立富山国保病院が27年度までに51の全病床を館山市内にある民間病院の安房地域医療センターに移管し、診療所にする方針が出されたが、人口3万5千人の南房総市で1万3千の署名が集まり、市長が決定を白紙撤回した。
冨山国保病院は、地域包括ケアが47床、感染症病床が4床で救急にも対応。19年の房総半島台風では多くの患者を受け容れ、コロナ患者も入院した。同病院が廃止されると市内の病床はほぼなくなり、救急医療も手薄になると反対の声があがったのだ。
今回の統廃合は南房総市と亀田病院グループが18年に地域医療連携推進法人を設立し画策された。地域医療連携推進法人は、ホールディングカンパニー、公立病院の民営化・統廃合のスキームとして各地に設立されつつある。
総務省はこの十数年、病床削減と病院統廃合を強力に推進してきた。08年~20年の間に全国84の公立病院が独立行政法人化し、また42の病院が指定管理者に移行した。
昨年3月、人口減少の進展や新型コロナ感染症、「医師の働き方改革」など医療環境の新たな状況に踏まえ、「公立病院経営強化ガイドライン」が策定された。
そこでは赤字解消から経営強化に重点を移すとし「統廃合ありきではない」「感染拡大時の公立病院の役割が改めて認識された」と説明している。公立病院の統廃合路線が軌道修正されたとの分析もあるが、依然として「経営形態の見直し」や医療機能の集約化を自治体に迫っている。
厚生労働省も「地域医療構想」を堅持し、公立・公的病院の統廃合リストを撤回していない。公立・公的病院の統廃合は、地域医療の受け皿を奪い、全国一律の医療サービスを放棄するものだ。
ちば合同労組ニュース 第162号 2024年01月1日発行より