やりたい放題の独立行政法人
業務委託や非正規化、雇止めが横行
理化学研究所(理研)で働く有期雇用の研究職の労働者が来年3月末で大量雇止めされる可能性があるとして理化学研究所労働組合の記者会見が大きく報道された。労働組合の試算によるとその数は600人に上る。
いわゆる無期転換5年ルールが2016年の法改定(専門的知識等を有する有期雇用労働者等に関する特別措置法)により研究職については10年に延長された。その期限が来年3月に来る。
無期転換の回避を狙う大量の雇止めが懸念されている。
理研では職員の8割以上が非正規、研究職では9割以上が非正規。労働組合によれば、18年3月末の事務系職員の大量雇止めは阻んだが、再び来年3月の研究職の大量雇止めに直面している。
理化学研究所は、もともと財団法人として設立され、株式会社や特殊法人、独立行政法人を経て、現在は国立研究開発法人である。
80年代までは600人程度の研究所でしたが、国のプロジェクト研究を次々と受け入れ、現在は5千人規模の研究所となっており、その8割が非正規なのです。
2012年に労働契約法18条が新設され、いわゆる無期転換5年ルールが有効となる18年を前に理研は、業務も予算もあるにもかかわらず、無期転換を回避する目的で無期転換権が発生する労働者の雇止めを画策した。労働組合は、雇止めに反対して団体交渉を続け、不当労働行為の救済申し立てなども行った。マスコミも大きく取り上げ、この時の大量雇止めは回避された。
出発は第二臨調
独立行政法人の研究機関はかなり多い。国立科学博物館、土木研究所や建築研究所、宇宙航空研究開発機構や気象研究所など。国立大学も同様だ。筑波研究学園都市には国の試験研究機関や大学が集まっている。
独立行政法人で働く研究職は、民間企業と比較しても独特の求人形態であり、プロジェクトによる募集なので有期雇用が多く、国家公務員試験に合格するか、優れた研究成果を上げることができなければ、契約継続や正規研究職にはなれない。
独立行政法人制度とは、各府省の行政活動から政策の実施部門のうち一定の事務・事業を分離し、これを担当する機関に独立の法人格を与える制度。その業務運営は、主務大臣が与える目標に基づき各法人によって実施され、事後に主務大臣が行政実績について評価を行う。
独立行政法人は22年4月1日現在で87法人。財政支出規模は3兆円を超える。常勤職員数は十数万人だが、非常勤職員の数は不明だ。上記の理研では8割が非常勤なので常勤の数倍の非常勤職員がいると考えてよいのではないか。
独立行政法人は、国鉄分割・民営化を遂行した第二臨調が「小さな政府」を掲げてから出てきた。英サッチャー政権は、政府の行政機能をエージェンシーに移譲した。エージェンシーは行政機関を個々の民間企業のように業務管理して効率化を図るとの趣旨で設置された。
独立行政法人は、実態はほぼ国の直轄で業務を行っているが、国に都合良く、そして無責任に運営されている。民主党政権の時代に官僚の天下り先として批判され「事業仕分け」の対象となった。
独立行政法人で働く労働者は、多くが非公務員化で公務員としての身分保障は奪われ解雇や雇止めの対象となる。国家公務員の身分を有する者も法定定員制度の対象外となっている。
職員の賃金などの労働条件も同様で、法人の業務成績などが反映され、予算が削られた場合は賃下げや要員削減が強行されかねない。業務委託や非正規への置き換えは一般企業以上にえげつない
労働組合法が適用
労働組合法との関係では、独立行政法人の大半は民間企業に近く、労働3権が保障されている。公共性が高い事業を行う法人とされる行政執行法人は、職員が公務員。国立公文書館や造幣局、国立印刷所など。行政執行法人も基本的には労働組合法が適用される。争議行為は禁止されているが、労働委員会に救済命令の申し立てもできる。
ちば合同労組ニュース 第143号 2022年6月1日発行より