映画紹介『生きとし生けるもの』

労働映画

映画紹介『生きとし生けるもの』

 山口県阿武町で新型コロナ対策の給付金4630万円を誤って振り込んだ事件で思い出した映画。『路傍の石』が有名な山本有三の未完の小説を1955年に三國廉太郎の主演で映画化したものだ。

 炭鉱会社の本社労務課に勤める伊佐早靖一郎(三國)は帰宅後、賞与袋に1万円多く入っていることに気付く。当時の大卒公務員の初任給より多い金額だ。一度は会社に戻り返金しようとするが、学費を滞納する弟に金を渡してしまう。
 後日、会計課の菅沼民子が上司から責められ自ら弁償して穴埋めをしたことを知る。良心の呵責に責められ謝罪しようと手紙で民子を呼びだす。だが民子の友人が交際の申し込みと勘違いしたこともあり本当のことが言い出せない。
 この日をきっかけに真実を告げないまま靖一郎と民子は交際することに。順調な交際が続くが靖一郎の表情には時々影が。民子は社長の息子の秘書となりやがてプロポーズされる。靖一郎は身を引く決心をする。靖一郎の弟の令二は兄の貧しく苦労してきたがゆえの卑屈な気持に苛立ちを覚える。

 その後、令二は兄の会社に就職し北海道支社の勤務に。正義感の強い令二は大卒ながら組合活動に積極的に参加し炭鉱ストの先頭に立つ。靖一郎は弟を説得するために北海道に向かう。ストは終り、兄弟は社長親子が泊る遠藤老人(笠智衆)の家へ。
 組合を非難し兄の恋人も奪おうとする社長の息子の横暴に対して礼二は食って掛かる。遠藤老人は、そんな礼二の姿に貧しい炭鉱夫の息子であった社長の面影を見出し…。最後の場面は労働映画ではなく文芸映画でした。

ちば合同労組ニュース 第143号 2022年6月1日発行より