実践的に考える職場と労働法/いわゆるシフト制労働者について

制度・政策

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いわゆるシフト制労働者について

契約を結ぶ時、労働条件の確認は特に注意を

 新型コロナに起因する休業問題などで大きな影響を受けたのがサービス業で働く「シフト制労働者」が焦点となった。厚生労働省が作成した「いわゆるシフト制により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」を使って考えたい。
 「シフト制」は、労働契約の締結時点では労働日や労働時間を確定的に定めず一定期間(1週、1月)ごとに作成される勤務シフトで初めて具体的な労働日や労働時間が確定するような働き方を指す。
 近年、24時間営業のコンビニやスーパー、ホテルなどで営業時間を朝昼夜など特定の時間帯で切り分け、労働者が交代で勤務する働き方が増えている。企業は、必要とする時間帯に労働者を配置できる働き方が必要となる。
 このため、本来は労働契約の締結時に明記するべき労働条件について曖昧なまま労働契約が締結され、労働者が不本意な労働条件で働かされる事態が生じます。
 実務的に使用者の立場から言っても「シフト管理」は難しい。労働者からシフト希望を集め、適切な人員配置ができるかを確認しながらシフトを作成することは多大な時間とエネルギーを必要とする。
 逆に言えば、労働者の意向・希望を無視し、労働者の健康管理や日常生活に注意を払わなければ、シフト作成は容易になる。
 労働者の立場からは、希望のシフトを出しても、営業スケジュールや他の労働者との兼ね合いで希望通りにいかずに不満が募ることも多い。また不規則な働き方は健康面でも、日常生活においても支障をきたすことが多い。
 最近は、あらかじめ決まった労働時間がなく、仕事のある時だけ使用者から呼び出しを受けて働く「ゼロ時間契約」も広がる。オンコールワーカーとも呼ばれ、フリーランス・個人請負のニュアンスで「労働者性」をめぐる問題にもなる。
 ケン・ローチ監督の映画『家族を想うとき』で描かれたが、英国では訪問介護ヘルパーなど低賃金の職種で急速に増え、専門職にも広がる。待機時間は無報酬、労災や年休などの労働者の権利もない。直前に仕事がキャンセルされるなど不安定な働き方だ。

シフト制の留意点

 以下に、シフト制で働く場合の基礎的な留意点を記しておきたい。
 まず応募時の留意点としては、会社は、募集時に業務内容・賃金・労働時間などの労働条件を労働者に対して明示しなければならない(職業安定法)。募集時に示された労働条件が労働契約を結ぶ段階で変更される場合があるが、その変更内容の明示も必要だ(職業安定法)。 
 採用が決まり労働契約を結ぶときの留意点としては、まずは①労働条件の明示。
 会社は、労働契約を結ぶときに労働条件(①~⑥など)を必ず書面で明示しなければならない(労働基準法)。特にシフト制で働き始める時はよく確認してください。労働者が希望すればメールで送ってもらうことができます。

①契約期間、②契約更新の基準、③就業場所、従事する業務、④始業・終業時刻、休憩、休日など、⑤賃金の決定方法、支払い時期など、⑥退職(解雇の事由を含む)
 さらにシフト制に関するルールについての労使が合意することが望ましいとして
◍会社はシフト作成時に労働者の希望を聴く
◍一旦確定したシフトの労働日や労働時間をキャンセル・変更する場合の期限や手続き
◍一定期間中の目安となる労働日数、労働時間数など
 ――などを示している。

年休や休憩もある

 シフト制で実際に働くときの主な留意点は以下。

(1) 労働時間、休憩

 シフト制労働者、労働時間の上限は原則1日8時間、週40時間です。この上限を超えた場合は原則として時間外労働手当が必要となる。
 さらに1日の労働時間が6時間を超える場合は計45分以上、8時間を超える場合は計1時間以上の休憩を勤務の途中で与える必要がある。

(2) 年次有給休暇

 所定労働日数、労働時間数に応じて年休が取得できる。

(3)休業手当

 労働者の責めに帰す事由により労働者を休業させた場合、会社は平均賃金の60%以上の休業手当を労働者に支払う必要があります。

(4)安全・健康確保

 シフト制労働者に対しても安全衛生教育や健康診断などは必要。 

5) 労働契約の終了

 有期労働契約の場合、会社は正当な理由がなく契約期間の途中で労働者を解雇することができない。期間の定めがない場合、客観的に合理的な理由もなく解雇できない。

(6) 社会保険労働保険

 シフト制で働く場合も労災保険の対象となる。条件を満たせば雇用保険や健康保険・厚生年金の被保険者となる。

 ちば合同労組ニュース 第157号 2023年08月1日発行より