川の底からこんにちは

労働映画

映画紹介『川の底からこんにちは』

 満島ひかり主演のコメディ映画。満島が演ずる佐和子は、上京5年目の派遣社員で5つ目の職場、5人目の恋人は子連れバツイチ上司の健一。夢も希望もないストレスまみれの日常生活で、「私は中の下」「しょうがない」が口癖だ。
 そんな佐和子が、父親が病で倒れ、故郷のシジミ工場の社長業を引き継ぐことに。実は5年前に実家を飛び出し故郷には戻りづらい。しかし仕事を辞めた健一に促され嫌々ながら戻ることに。駆け落ち娘が突然「私が社長です」と言っても、工場のおばさんたちは誰も従わない。かつて恋人を佐和子に奪われた同級生は腹いせに健一を誘惑。
 工場は倒産寸前、健一は同級生と出奔、残された子どもの母親役も。佐和子の酒量は増えるばかり。ストレスが頂点に達した佐和子、しかし一転して一時帰宅した父親を前に「あたし、あの人と結婚するから」「しょせん、あたしなんて大した人間じゃないからさ。だからがんばるよ」と宣言。さらには、工場のおばさん軍団に「私なんてしょせん中の下の女ですから。逆に中の下じゃない人生送ってる人なんているんですか!?」「もうがんばるしかないんですから」と叫ぶ。
 ここから「中の下の女」の「開き直り」が人生を転回させていく。最後のシーンでは健一に遺骨を投げつけ、「お父さ~ん」と絶叫。なかなか上手に描写できないが、無愛想で不器用な雰囲気を醸す満島の演技に魅き込まれる。『愛のむきだし』も良かったが本作も良い。
 社歌が笑える。

♪上がる上がるよ消費税/金持ちの友達一人もいない/来るなら来てみろ大不況/その時ゃ政府を倒すまで/倒せ倒せ政府/シジミのパック詰め/川の底からこんにちは♪

ちば合同労組ニュース 第103号 2019年02月1日発行より