舟を編む

労働映画

映画紹介『舟を編む』

 時間がなかったので昔に観たのを思い出しながら…。
 国語辞典『大渡海』の刊行計画を進める出版社が舞台。しかし辞書編集部のベテラン編集者は定年間近、後継者探しが急務だった。松田龍平が演じる新入社員・馬締は、真面目すぎて職場で浮いていたが、卓越した言語センスを見出され辞書編集部に異動することに。
 「ら抜き」言葉や「憮然(本来は「落胆してどうすることもできない様子」の意だが、最近は「腹を立てている様子」の意で使われる)のように日々変化する日本語を解説する辞書をめざす『大渡海』は見出し語が24万語。気の遠くなる作業を要する大事業だ。結局、10年を超える編纂作業に。
 仕事は気が遠くなる地味な作業ばかり。新たに生まれる日本語を集めるため合コンで若い女性の使う言葉を集め、ファストフードで女子高校生の会話に耳を傾け…。ついには膨大な言葉の海で溺れる悪夢にうなされる。
 やがて社内では出版中止が取り沙汰される。「出版の頃には電子辞書にとってかわられている」。予算縮小を条件に存続が決まるも頼りの先輩・西岡が営業部へ人事異動に。
 12年後、出版を翌年に控え忙しくなる辞書編集部。編集作業は5度目の校正に入る。その間も日本語は増え続ける。監修者の松本教授の体調が思わしくない。一方、単語の欠落が発覚。校正作業を中断し、単語抜けのチェック作業をすることに。余命が迫る松本のために完成を急ぐ。しかし完成を待たず松本は……
 三浦しおん原作。10数年かかる辞書の編纂に、自分の一生をかけて淡々と仕事に打ち込む姿を描いた良作。「舟を編む」とはよく言ったものだ。アニメ版もあり。

ちば合同労組ニュース 第108号 2019年07月1日発行より