西部戦線異常なし

労働映画

映画紹介『西部戦線異常なし』

 ロシアのウクライナ軍事侵攻で、この映画が思い浮かんだ。第一次世界大戦における西部戦線(独仏国境沿いの戦線)を描いた映画。反戦映画として最も著名な映画の一つ。原作はドイツの作家レマルクの長編小説。第一次大戦は、欧州だけで6千万の兵士が動員され、1千万人以上が戦死した。
 現代の戦争は総力戦だ。その性格を特徴づけたのが第一次世界大戦だった。大量消費・大量動員・大量破壊を特徴とし、軍事・政治・経済・思想・文化など国家の総力を動員する体制確立が最大の課題となった。それ以前の貴族や傭兵の戦争ではなく、愛国主義・ナショナリズムが扇動され、まったく普通の若者が大量に兵士として動員された。銃後を支えるために総動員された産業基盤や住民も攻撃対象となった。

 映画は、ドイツのある町の学校で教師が「祖国のために戦え。君たちは英雄となるのだ」と生徒たちに吹き込む。感化された生徒は我先に入隊を志願。級長のポールは同級生と同じ班に配属され、情け容赦ない猛訓練を経て西部戦線へと送られる。本物の戦争を目の当たりにし、1人また1人と級友が戦死していく。ある日の戦闘でポールは仏兵を突き殺す。ポケットから彼の妻子の写真が落ち、ポールの胸は痛む。
 数か月後、負傷し病院へ送られた彼は故郷へ一時帰郷。母校の教師は相変わらず戦争を讃え愛国心を説いている。彼は「国のために死ぬよりも死なないことの方がよっぽどましだ。何百万人も国のために死んでる。どんな意味があるのか」。

 ちなみに第一次世界大戦の前、知識人や政治家の多くは「世界が滅ぶような戦争など起きるはずがない」と語った。

ちば合同労組ニュース 第141号 2022年4月1日発行より