最低11時間は必要/ 労政審,骨抜きの休息時間規制

物流倉庫・運輸

労政審 骨抜きの休息時間規制(勤務間インターバル)

労災・事故防止へ最低11時間は必要

 労働政策審議会(厚生労働大臣に任命された労働者・公益・使用者の各10人、計30人の委員で構成)の労働条件分科会自動車運転者労働時間等専門委員会は3月28日、運輸業界の新たな過重労働対策として、バスとタクシー事業者に対し、前日の終業から翌日の始業までの休息時間について、現行から1時間増やして最低9時間の確保を義務付ける方針を決めました。
 トラック・バス・タクシーなど運輸労働者については、拘束時間や休息時間(勤務間インターバル)、運転時間などを規定する厚生労働大臣告示の「自動車運転者の労働時間等の改善基準告示」というものがあります。
 しかし規制は緩く実効性を欠き、法律ではなく罰則もないので「違反しても構わない」と開き直っている事業者もおり、違反率は50%前後(厚生労働省労働基準局監督課)と高いのが現実です。
 このため19年施行の「働き方改革」関連法で、運輸業界では24年4月から残業時間の上限規制が適用されることになりました。しかし実際には一般業種の1・3倍にあたる年960時間となっており、追加の対策が求められていたのです。

脳・心臓疾患1位

 その規制の一つが「休息時間(勤務間インターバル)」と呼ばれるもので、同関連法では「事業主の努力義務」にとどまり、具体的な時間は明示されていませんでした。
 専門委員会では当初、勤務間インターバルについて最低11時間とする案が提示されましたが、使用者側委員が「交通需要に対応できない」などと主張し、上記の通り9時間となったのです。トラック運転手についても同様の方向と報じられています。
 ちなみに運転手が1日に勤務できる時間は原則として13時間以下、最長拘束時間は1時間短縮され1日15時間となります。
 トラックやバス、タクシーの労働者は、長時間労働や低賃金の劣悪な労働条件で働いており、近年は人手不足や高齢化が深刻化しています。
 特に長時間労働は他の産業とも比較して群を抜き、脳・心臓疾患の労災や過労運転による交通事故は社会問題となっています。昨年度の脳・心臓疾患の労災認定件数は、トラックなど道路貨物運送業が最も多く、バスなどの旅客運送業が続きます。
 そもそも脳・心臓疾患の労災認定基準には、労働時間の長さ以外の労災の要因として「勤務時間の不規則性」が項目としてあり、具体的には「勤務間インターバルがおおむね11時間未満の勤務の有無」をみるのです。
 つまり、勤務間インターバルが9時間であれば、脳・心臓疾患で労災認定されたとしても、そのような長時間労働を強いた使用者は責任が問われないことになります。

4~5時間睡眠に

 9時間の勤務間インターバルで検討すると、例えば往復の通勤で2時間、食事や入浴などの生活時間が3時間とすれば睡眠時間は4時間しか確保できません。インターバル11時間は睡眠時間を確保する最低限の基準と言ってよい。
 「人手が足りない。経営が苦しいから」と11時間を拒否する使用者側の主張が押し込まれる現状は実に歯がゆいばかりだ。

ちば合同労組ニュース 第141号 2022年4月1日発行より