映画紹介『1秒先の彼女』

労働映画
 2020年公開の台湾映画。郵便局で働くシャオチーは何をしてもワンテンポ(1秒)早い。写真撮影では必ず目を瞑り、時計が鳴るより早く目覚める。他方、バスの運転手のグアタイは何をしてもワンテンポ遅い。
 出会いのない毎日に退屈していた彼女は公園でイケメンのダンス講師ウェンセンに声をかけられ、バレンタインデーにデートの約束。当日、珍しく寝坊した彼女は大急ぎで家を出て待ち合わせのイベント会場に向かう。ところが会場は後片付け中。清掃員にイベントは昨日と言われる。腕は日焼けし、ウェンセンに電話してもつながらない。訳がわからないシャオチー、彼女の1日はどこへ行ってしまったのか?
 定番のタイムリープ映画なのだが、こういう発想もあるのかと感心する仕掛けで伏線を回収する。ここからは完全にネタバレなので観る予定あれば読まないで下さい。
 何をしても1秒遅いグアタイは決定的瞬間に1日を得る。自分以外が停止した街で唯一出会った男(実は死んだ父親)が「(この1日は)利息だ」と語る。グアダイとシャオチーの2人は幼い頃に出会っており、彼は一途に彼女に思いを寄せていた。そして多数の女性から金を騙し取る悪人ウェンセンから彼女を救うために悪戦苦闘していたのだ。
 日常や人生のテンポは人それぞれだ。せっかちな人もノンビリした人もいる。人より少し時間の進みが早い世界に生きているシャオチーとちょっと時間の進みが遅い世界に生きているグアタイ。2人の人生の交差が、〝謎の1日〟として交差する。私書箱や手紙、鍵などの伏線も見事に回収。