下町の太陽

労働映画

映画紹介「下町の太陽」

 倍賞千恵子主演、山田洋次監督の1963年の映画。同タイトルのヒット曲を映画化したもので東京都墨田区曳舟の近くにあった資生堂の工場とその周辺が舞台だ。
 寺島町子(倍賞)は石鹸工場で働き、同じ工場の事務職員の毛利と交際中。毛利は本社勤務を目指して正社員試験の勉強に励む。正社員になって下町を出て郊外の団地に住むのが夢だと語る毛利に町子は少し違和感。ある日、町子は同じ町の鉄工所で働く北良介から告白される。
 町子の住む長屋は、井戸端会議で笑い声が絶えず子どもたちが路地を駆け回る典型的な下町暮らし。ある日、中学生の弟が万引き事件を起こし母代わりの町子は思い悩む。弟と話すよう毛利に頼むが試験勉強を理由に断られ、弟を知る北に相談するため鉄工所を訪ねる。汗だくになって溶鉱炉に向き合う北の様子に感動する町子。弟のことを理解する北は「あいつは悪い子ではなくいい奴だ」。
 いよいよ試験。毛利は不合格となり、同じ工場で働く処世術に長けた金子が合格する。慰める町子に対し金子を悪く言う毛利。二人の間に空虚な空気が流れる。数日後、金子が交通事故を起こし、これ幸いと毛利は会社に密告し繰り上がりで正社員に。すっかり得意げな毛利は町子に求婚する。しかし町子は聞き返す。「もし試験に落ちても、あたしと結婚の約束するつもりだった?」「愛情だけじゃ結婚できないのかしら」。
 まるでプロパガンダ映画だと批判的な声もあるが、1時間半に満たない映画でステレオタイプな描き方になるのは仕方ない。〝自分の頭で考える〟主人公像は、現在的にも啓発的で面白かったです。

ちば合同労組ニュース 第96号 2018年07月1日発行より