訪問介護の基本報酬引き下げに怒りと危機感

医療・介護
訪問介護の基本報酬引き下げに怒りと危機感
 4月からの訪問介護の基本報酬の引き下げに現場から「在宅介護が崩壊する」との声も上がっている。今回の改定では、処遇改善加算が1・59%増となるなど全体としてはプラス改定となっている。
 だが厚労省は、特別養護老人ホームの1・0%、の赤字や全サービスの平均2・4%の黒字と比較し、訪問介護の利益率が7・8%あることを根拠に訪問介護の報酬引き下げ方針を出した。
 そもそも厚労省の経営実態調査のデータに問題がある。訪問介護といっても、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)などは集合住宅に併設され、効率よく訪問できるので利益率が高い。このため全体の数字が押し上げられている。
 地域を1軒1軒回る訪問介護は小規模事業所が多く、非常に苦しい経営状況にある。経営規模も小さく調査に応じる余裕もない。月2001回以上の訪問回数の事業所は利益率が13%だが、201~400回では1%台と大きな開きがある。
 多くの団体が引き下げに抗議している。「在宅介護の終わりの始まり」との強い危機感も表明されている。訪問介護員(訪問ヘルパー)は、介護が必要な高齢者宅で調理などの生活援助や身体介護を行う。人材不足は深刻で22年度の有効求人倍率は15・53倍。若い人が少なく60代以上が4割を占める。
 訪問介護は、移動や報告書の作成の時間が労働時間としてカウントされないケースが多い。労災保険などの社会保険が不備の事業所もある。実態把握と取り組みを強化したい。