職場の矛盾や弱点を見つけ出して闘いの糸口に

実践的に考える職場と労働法 連載・職場と労働法

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今月から「実践的に考える職場と労働法」と題して連載を始めます。どんな職場でも闘いの手掛かりは必ずある。職場の矛盾や弱点を見つけ出して闘いの糸口にしたい――そういう気持ちで労働基準法や労働安全衛生法を実践的にチェックしたいと思います。合同労組やユニオンの運動にとって、〈労働者の権利の擁護〉は必須課題であり、動労千葉の「運転保安闘争」的領域と並ぶ労働運動実践の重要な要素ではないかと思います。
試行錯誤ですが『実践の手引き・労働基準法』(西村卓司・古谷杉郎著/91年)と『労働法第11版』(菅野和夫著/16年)を参考文献にして勉強しながら書いていきます。みなさんの意見・感想もよろしくお願いします。

職場の矛盾や弱点を見つけ出して闘いの糸口に

職場闘争の出発点

職場闘争の出発点として、労働基準法・労働安全衛生法と就業規則の読み込みは大切な一つの手だと思います。それだけで法律違反をいくつか発見できるはずです。門に入ってから門を出るまでの自分の行動を注意深く検討することで、さらに多くの法律違反や権利放棄の事実に気付くはずです。
憲法27条第2項「賃金・就業時間・休息その他の勤労条件に関する規準は法律で定める」を受けて労働条件の最低基準を定めたのが労働基準法です。労基法が労働者保護法と言われる由縁です。
労働法は、百年を超える長い労働者階級の闘いによって生まれたものです。法律それ自身が自立的に展開して労働者を保護しているわけではないことには留意する必要があります。〈闘いなくして権利なし〉です。

民法に優先される

労働法が民法と競合する場合は労働法が優先されます。

いわゆる市民法(民法)は、法の前に万人が平等であるという建前で〈契約自由の原則〉が優先されます。民法上では、労働者も資本家も平等だから契約自由の原則なのだというわけです。
しかし資本主義の世の中ではそれはうわべだけの話です。労働者を解雇する資本家と解雇される労働者が対等であるとの説明はとうてい納得できません。
契約の自由をタテにした資本家の支配や権利侵害に対して世界中の労働者の長い闘いによって、労働者の生活や権利を保護する労働法が生み出され、それは市民法に優先されるようになったのです。
「資本家も労働者も1対1の対等・平等」とする最近の傾向には本当に警戒が必要です。

07年には労働契約法が施行され、労働契約は労働者と使用者の合意が原則だと強調されるようになり、ますます労基法が後景化されています。
「本人が同意すれば労働時間規制は適用除外OK(残業代ゼロ制度)」「最低賃金以下でも本人が同意したならいいじゃないか」という安倍政権の論議は超危険です。

労働条件の最低基準

労働基準法の大半の条文は強行規定です。
強行規定というのは、当事者の意思や状況にかかわりなく無条件に適用される法規ということです。労基法違反の企業は刑事罰となり、法律の規準に達しない労働契約はその部分については無効となり労基法の最低基準が適用されます。労働法以外の法律では、無効のままで空白になるのとはずいぶん違います。
しかし、その内容がやはり最低基準にとどまっているのは、これが資本家の譲歩の限界だということです。

そもそも産業革命後の英国で最初に工場法が制定されたのは、資本家の熾烈な競争によって長時間労働や児童労働がエスカレーションし労働者の健康悪化と平均寿命低下が深刻化し、そもそも資本主義として維持できなくなる危機に陥ったからです。
最低基準の設定は実際には資本家の利益にためにあることも忘れてはならないと思います。
日本の労働者の現状が、最低基準の遵守をめぐって争われている現状は悔しい限りですが、ここが出発点です。

労働基準法や労働安全衛生法、労働契約書や就業規則を読み込むことは、職場で闘いを開始するにあたって、適切な闘争課題、闘争形態を選び出すために重要だと思います。労働者が警戒すべき点、利用できる点を知ることは大切なことです。(S)

ちば合同労組ニュース 第72号(2016年7月1日発行)より