通勤手当と通勤災害を考える

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通勤手当と通勤災害を考える

通勤途中の事故やけがは労災保険が適用される

 通勤手当の問題は良く相談されます。「正社員には出ているのにアルバイトには支給されない」「高速代が自腹で毎月赤字」「バス通勤で申請していたが自転車で通っていることがばれた」など。
 かつて私も都内で派遣労働者として働いた際、品川駅などの集合場所までの交通費が自己負担で往復すると1000円以上になった記憶があります。
 実は、労働基準法には通勤手当の支給に関する規定はありません。このため通勤手当の支給は会社の義務ではなく、法律上は任意で行われています。通勤手当を支給しなくとも企業側に罰則はないのです。
 しかし、実際には多くの会社で通勤手当を支給しています。正社員に限れば9割超の支給率です。アルバイトやパート労働者になると7割程度のようです。
 全額支給(月額非課税上限である15万円が上限というケースが多い)の会社もあれば、「月1万円まで」「1日1000円まで」と上限を設けている会社もあります。
 電車やバスの場合は全額支給の会社が多いですが、マイカー通勤の場合、車種による燃費やガソリン単価の変動もあって計算の煩雑さは確かにあるのですが、定額制だったり、距離に応じて支給(上限あり)というケースが多いようです。

通勤手当は賃金

 いずれにせよ支給するのであれば賃金規定等に明記する必要があります。賃金規定などに明記すれば労働基準法上の「賃金」なので、法律上の支給義務が生じます。
 通勤手当は月額15万円までは非課税です。数年前までは10万円でしたが引き上げられました。賃金には所得税がかかので所得が多いほど所得税がアップします。遠距離通勤で通勤手当が多額の場合に所得税が増えては大変です。他方、社会保険料の計算には含まれます。
 高速代や駐車場代は自腹というケースは多く、地方都市などではマイカー通勤で高速を使わざるを得ず、通勤手当が支給されても1万円単位で赤字になる人も多い。

派遣の通勤手当

 正社員に通勤手当を支給する一方で、アルバイトやパート労働者に通勤手当を支給しない、あるいは一部しか支給しない企業もあります。雇用形態による通勤手当の不支給には合理性もなく、違法・無効との判決も出ています。
 派遣労働者には通勤手当が支給されないケースが多い。派遣労働者、時給に含まれているので交通費は自己負担と説明されています。
 しかし往復で千数百円というケースでは、実質賃金がかなり低くなってしまいます。最近、交通費を一部負担する派遣会社もありますが、実際には時給が低めに設定されている場合も多い。派遣社員の場合、交通費を課税控除することもできず、税制上も差別されています。
 「派遣労働者にも通勤手当を」と要求して人材派遣会社リクルートスタッフィングを相手に裁判も行われています(係争中)。
 契約社員の通勤手当などの格差めぐるハマキョウレックス事件では、最高裁は「通勤手当は、通勤のために要した交通費等の全額又は一部を補填する性質のものであり、職務の内容や職務の内容や範囲とは無関係に支給されるもの」と契約社員の訴えを支持しました。

通勤災害の制度

 通勤途中のけがは労災保険が適用されます。かつては業務上災害ではないとして、労災保険の対象外でした。しかし毎年1万人以上の交通事故が発生し交通戦争と言われた時代、通勤災害は深刻な問題で、1973年に通勤災害にも通常の業務災害に準じてほぼ同じ内容の保険給付が与えられることになりました。
 ただし、業務災害の場合は、休業中には解雇できないなどの規制がありますが、通勤災害の場合にはそうした解雇制限規定が適用されないことは注意が必要です。
 通勤中かどうかの判断はかなり厳格です。
 自宅と会社の往復中、特に寄り道もしていない場合はもちろん通勤中です。途中で駅構内のトイレや売店に立ち寄っても通勤中です。定期券の経路だけでなく、その経路が不通のため別の路線を使った場合も大丈夫です。
 通院や介護で病院に寄った場合や日用品の買い物でコンビニやお店に寄った場合は、通常の通勤経路から外れた部分以外、つまり通勤経路に復帰した時点から再び通勤中として扱われます。
 逆に通勤中とは扱われない例としては、仕事と関係がない飲み会に参加すると通勤中とは扱われません。出張中は原則、通勤中ではなく業務中として扱われます。仕事の後の組合活動やサークル活動については2時間程度であれば、その後の帰宅は通勤として認められます。

ちば合同労組ニュース 第114号 2019年01月1日発行より