労働組合を復権し春闘を

組合活動

労働組合を復権し春闘を

全米自動車労組は25%賃上げ獲得

労働分配率、過去最低

 企業が人件費の割合を示す「労働分配率」。財務省が公表した法人企業統計のデータによると、大企業の労働分配率がこの50年で最低水準となっています。
 労働分配率は企業の経営状態を測る指標の一つで、企業が生み出した付加価値(役員と従業員の人件費、経常利益、賃借料、税金や利払い費、減価償却費の合計)のうち人件費が占める割合です。
 金融・保険業を除く全産業の労働分配率は53・7%。前年度より1ポイント下がった。過去50年間の平均は58・8%なので、実に5%も低い水準にあるのです。
 特に顕著なのは資本金10億円以上の大企業。08年リーマンショック以降、ほぼ右肩下がりで低下し、22年度は前年度より2ポイント低い36・6%で、大企業の過去の平均(44・4%)を大きく下回り、この50年で最低でした。
 資本金1億円未満の中小企業の労働分配率は66・3%で、前年度より0・3ポイント減で過去20年の平均(68・8%)との差も小さい状況です。
 少なくとも有力な経済指標である労働分配率を検討するだけでも、大幅賃上げ要求は必要であり、実現可能です。近年、労使の社会的な力関係が不均衡になっていることが問題なのです。労働組合運動の後退した現状を変革することが必要です。むしろ〝賃上げ〟というもっともオーソドックスな要求と行動を通して労働組合を復権させていくことが必要です。

全員投票で新会長

 米国では、全米自動車労組(UAW)が自動車大手3社から4年半で25%という大幅な賃上げを実現しました。
 UAWは40%賃上げなどを求めて9月15日に史上初の3社同時ストを開始しました。終盤には利益率の高い大型車の工場をストの対象に加えて、会社に圧力をかけました。参加者は最大4万5千人に及びました。
 今回の賃上げの成果は過去20数年の賃上げの合計より多く、労働組合は「過去数十年にわたる譲歩から180度転換した」と言っています。
 米国の自動車産業では、08年リーマン・ショック以降に就職した労働者は賃金が著しく低い状況でしたが、今回のストライキの結果、2層賃金制が廃止され、多数の労働者が同じ賃金水準に近づき、結果として5~8割の賃上げとなった労働者もいます。
 また多くの臨時労働者が正規労働者に転換されることになりました。退職金や医療保険、有休休暇なども改善されました。
 この十数年、米国の自動車工場で働く労働者は2層賃金によって分断され、過去2人の組合トップが汚職で逮捕される惨憺たる状況でしたが、組合員の全員投票によって「汚職なし、譲歩なし、階層なし」のスローガンを掲げた新会長が選ばれました。
 この新会長のもとで今回のストライキが決行され、自動車会社に大きな譲歩を強いたのです。米国ではハリウッドの脚本家・俳優組合がストを決行するなど大規模ストが増えています。
 「そごう・西武」の労組が西武池袋本店で大手百貨店で61年ぶりのスト実施など、日本でも労働運動の転機が始まっています。

 ちば合同労組ニュース 第161号 2023年12月1日発行より